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注目記事2019.07.17

“健康経営”と金融業界

長寿大国・日本。平均寿命は既に1980年代に世界一となり、1992年に約4000人しかいなかった100歳超えの長寿者は2018年には約7万人にも増えました。たいへん喜ばしいことなのは間違いありません。

背景にあるのは医療の進歩です。特にがんや心疾患などの治療が進み、病気になっても長生きできる高齢者が増えたことで、寿命の伸びを押し上げています。

その一方で注目されるようになったのが、健康寿命や健康格差の問題。つまり単に長寿であるだけでなく、誰でも健康を保ちながら長生きできるか、という点が問われるようになってきたのです。

こうした状況を受けて企業も「健康経営」に本格的に取り組むようになり、それは金融業界にも変化をもたらすようになりました。

従業員の健康は企業の重要な経営課題

「健康経営」とは、企業が従業員の健康管理を重要な経営課題として位置づけていることを指します。

どの企業も「人材こそが最も重要な経営資源」としていますが、不健康な人材ばかりでは経営がおぼつかないのは当然のこと。経営資源である従業員の健康が重要な経営課題になるのは当たり前でしょう。

それがここへきて、さらに注目されるようになった背景には、労働人口の減少という構造的な問題が挙げられます。ロボットやAIといったテクノロジーの活用は当然のことですが、働き手が少なくなっていく中で労働生産性を高めていくには従業員一人ひとりが健康を保ち、より高いパフォーマンスを発揮しなくてはなりません。「働き方改革」もこうした流れを後押ししています。

従業員が心身共に健康であるほど、仕事に対するモチベーションは高く、優れた生産性を発揮するであろうことは容易に想像できます。企業がさらに成長していくためには、従業員の「健康」は不可欠なのです。

経済産業省も、健康経営に力を入れている企業を「健康経営優良法人」として認定する制度を設けるなど、その普及に本腰を入れています。

健康な金融人材が地域経済を健康に保つ

こうした流れに、金融業界も様々な影響を受けています。

例えば筑波銀行や東京東信用金庫は、前述した経済産業省の「健康経営優良法人2019」としての認定を受けました。

また、東北銀行は、経営理念である「地域金融機関として地域社会の発展に尽くし共に栄える」という経営理念を永続的に実現するには従業員の心と体の健康は必要不可欠ということで、「健康宣言」を策定しました。阿波銀行も「職員および家族の健康づくりを積極的に支援し」~「健康で豊かな地域社会の発展に貢献してまいります」と、健康経営への取り組みを宣言しています。

人口減少や高齢化によって特に地方の活力が失われつつある中、地域経済を支える金融機関の従業員がまず健康であろうとすることは大変重要なことです。

一般に金融業界で働く人はハードワーカーとのイメージが否定できない中、仕事同様、心身の健康にも真剣に向き合っているという姿勢を明確にするのは歓迎すべきことです。

健康への取り組みが融資の条件に

そして「健康経営」重視の流れは、金融機関の営業姿勢にも反映されるようになってきました。

例えば東邦銀行では、健康経営に取り組んでいる事業所に対して通常より低い金利で長期の融資を行っています。四国銀行でも、健康経営に取り組む法人向けの「健康経営サポート融資」を行っています。さらに北日本銀行でも、健康経営に取り組む企業を資金面から融資する「健康経営融資」を行っています。

中でも代表的なのが、日本政策投資銀行(DBJ)による「DBJ健康経営格付」です。これは従業員の健康配慮への取り組みに優れた企業を独自の評価システムで選定し、その評価に応じて融資条件を設定するというものです。

既に多くの企業がこの「DBJ健康経営格付」を取得。DBJでは「企業が健康経営に取り組むのは、もはや当たり前のこと」としており、今後もこうした流れは加速するとみています。

現代では企業が環境問題に配慮した取り組みを行うのは当然のこととされていますが、これからは従業員の経営に配慮するのも当然のことと受け止められるようになっていくことでしょう。金融業界がそうした流れを後押しするのは間違いないようです。

まとめ

「健康経営」への取り組みは、従業員の生産性向上に加え、企業イメージの向上という側面もあります。一見すると単なる“コスト”のように思われがちですが、今後は“投資”という側面が強くなっていくことでしょう。

もちろん心身の健康を保つ上で最も大切なのは働く人、一人ひとりの意識と取り組みにあることは間違いありません。「健康であることも働く上での重要な資質の一つ」という認識を持ちたいものです。