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注目記事2019.06.12

「ネオバンク」は既存の金融機関をどう変える?

「新しい」や「復活」などの意味を持つ“ネオ”という言葉は接頭辞として使われることが多く、例えば「ネオリアリズム」は「新現実主義」と訳されます。

この“ネオ”を銀行にくっつけた言葉が「ネオバンク」。最近よく耳にするようになりました。文字通り「新しい銀行」ということなのですが、実はそのインパクトはかなり大きなものです。これからの金融業界を考える上で重要なキーワードの一つである「ネオバンク」について考えてみましょう。

銀行にとっての大きな脅威に

例えばあなたが家電量販店に出かけていき、大画面の4Kテレビを買いたいと思ったとします。画質のきれいな4Kテレビは一度目にすると、もう従来のテレビでは我慢できないほど。でも、けっこうな値段がします。

そんなとき「現金やクレジットカードがなくても大丈夫。お店がお金を立て替えますよ」というサービスがあったらどうでしょう。実はこれが「ネオバンク」なのです。

この場合、お店は金融業ではなく銀行の免許も持っていませんが、“お金を立て替える”ということで実質的に金融機関と同じサービスを消費者に提供することになります。このように銀行以外の事業者が金融サービスを提供するとき、その事業者を「ネオバンク」と呼びます。

この例の場合だと、本来なら消費者が利用するはずだったクレジットカード会社、あるいは現金を引き出すために利用するATMを提供している銀行は、そのビジネスの機会を銀行免許を持っていないお店に奪われてしまったことになります。

このように既存の金融機関にとって大きな脅威になるのでは、と言われているのが「ネオバンク」なのです。

利便性の高さで圧倒的な評価

“ネオ”には「過去から続いてきたものが変化して新しくなった」というニュアンスがあり、「ネオバンク」には“従来の銀行とは異なる新しい銀行”という側面が強くあります。何が“新しい”かというと、従来の銀行が支店の窓口やATMを介して利用者とつながっていたのに対し、「ネオバンク」はそれらを介さず、主としてデジタルデバイスを介して利用者とつながっているという点です。言うまでもなく、デジタルデバイスとは主としてスマートフォンを指します。

「ネオバンク」登場の背景には、「金融+テクノロジー」のフィンテックの存在があります。「ネオバンク」の存在感は特に米国で増しており、従来銀行が担ってきた預金や融資といったサービスを代わりに担ってくれる事業者を利用する人が増えているのです。

そして、ここのところ日本でも「ネオバンク」に対する関心が高まっており、スマホだけで送金や現金引き出しなどができ、しかも営業時間等に関係なく、いつでもどこでもサービスが利用できるという点が、従来の銀行より圧倒的に高く評価されています。

なお、「ネオバンク」と同様に「チャレンジャーバンク」という言葉も注目されています。こちらは銀行業ライセンスを取得した事業者が、既存銀行と同じサービスをモバイルアプリ上で提供するというサービスモデルです。

「ネオバンク」は自分自身が銀行免許を持っていないので、金融サービスを提供するには既存の銀行と提携する必要がありますが、「チャレンジャーバンク」は自ら銀行免許を持っているため、銀行と連携せずにサービスを提供することができます。

連携の道を探る金融機関

このように「ネオバンク」は、ビジネスチャンスを奪うという点で既存の金融機関にとっては“敵”ということになります。

しかし“敵”とみなして対立するのではなく、連携することで新たな可能性を探ろうとする動きが目立っています。例えば新生銀行グループでは、金融サービスの展開を計画する企業向けに「ネオバンク・プラットフォーム」を提供すると発表しました。

冒頭の客が4Kテレビを買いに来た家電量販店の場合だと、新生銀行グループのプラットフォームを利用することで、決済や後払いなどのサービスを簡単に提供することができるわけです。しかも、サービスの立ち上げも短期間で行うことができます。

新生銀行側は、プラットフォーム提供を通じて得られたデータやノウハウを次の商品・サービスの開発に活用できるというメリットがあります。こうした業界の枠を超えた新しいコラボレーションが、今後の金融業界の可能性を一気に押し広げていくかもしれません。

まとめ

金融業界以外の企業が金融サービスを提供する「ネオバンク」。スマホ時代ならではの新しいビジネスで、従来の金融機関にとっては大きな脅威となっています。

一方で「ネオバンク」向けにサービスを提供することで、金融機関としての新しいビジネスの創出につなげていこうという動きもあります。こうした動きは、今後さらに広がっていきそうです。