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注目記事2019.05.22

「給料前払いサービス」がなぜ注目される?

「今月ちょっとピンチ! バイト代が入るまでお金貸して」。そんなふうに親や友達に泣きついた経験をしたことがある方もいらっしゃるでしょう。

でも、社会人になったら給料でやりくりすることが基本。簡単に借金するわけにはいきませんね。だからといってお財布は寂しいし…。

そんなニーズに応えるように、新しいビジネスが脚光を浴びています。金融業界にとっても、ビジネスチャンスとなっているようです。

会社に代わって給料を立て替え

そのサービスが、「給料の前払いサービス」です。

昭和の時代には、「給料が足りなくなったので社長に直談判して前借りした」という会社員は少なくありませんでした。しかし、それも昔の話。企業のガバナンスが厳しく問われる今、組織のルールを超えて個人が給料を前借りするなどということは通用しにくくなりました。

そうしたニーズに応えてきたのが消費者金融などでしたが、最近では福利厚生の一環として「給料の前払いサービス」を導入する企業が増えています。

こうした企業の社員は、給料日前でもタイムカードの情報などをもとにして、働いた分の給料を受け取ることができます。借金とは違って、実際に自分が働いた分の給与を前倒しして受け取るわけですから、抵抗感なく利用できるというメリットがあります。

もっとも実際に社員からの前借り希望に応えて給料を支払うのは、システムを提供する“サービサー”。つまり企業が支払う分を一時的に“立て替え”ているわけです。企業はその代わりにサービスの利用料をサービサーに支払うほか、社員も利用するごとに手数料を支払うというケースがほとんどです。

人材採用力を高めるために

こうしたサービスが広がってきた背景には、労働力不足があります。慢性的な人材不足が続く中、企業は福利厚生の充実を図ることで人材採用力を高めようとしており、その一環として給料の前払いを行っているのです。

また、非正規労働者の占める割合が増えたという背景もあります。非正規労働者は交通費も自己負担となるケースがほとんどであるため、日々の生活に現金が必要となります。そのため「給料日を待たずに給料が受け取れる」ことは大きなメリットとなります。実際、「前払いOK」をうたったことで求人の応募者が増加したという企業も多数あるようです。

一方で、問題がないわけではありません。前払いとはいえ、自分の給料を受け取るのにシステムの利用料が差し引かれることから、「会社が利息を引いて給料日までお金を貸しているのと同じではないか」という指摘のあることです。

この点について「給料を担保にお金を貸すのだから貸金業に近い。貸金業登録をせずに、このサービスを導入することは法律違反になる可能性もある」と指摘する声があることも事実。また、労働基準法では、賃金は雇用者が直接一括払いするように定められていることから、「立て替えサービスは原則違法」という指摘もあります。

どうやら「給料の前払いサービス」は法的にはグレーゾーンというのが現状のようです。

金融業界もサービス提供に前向き

グレーゾーンとはいえ、「給料の前払いサービス」へのニーズが高いことは事実。サービスを導入する企業も増えています。そこで金融業界もこのビジネスの可能性に着目し、参入する企業が出てきました。

例えば、きらぼし銀行では「前給(まえきゅう)」という名前でサービスを提供。同行ではこのサービスを前身の「東京都民銀行」時代の2005年から提供している先駆け的な存在です。このきらぼし銀行と業務提携して「前給」サービスを顧客企業に提供するようにしたのが池田泉州銀行。貯蓄の少ない若年層の従業員が急な飲み会や冠婚葬祭などで手元資金が不足したときなどを想定して、サービスを提供しています。

また、中小企業向けにリースサービスを提供しているリコーサービスでも「給与前払いサービス」の提供をスタート。既に多くの企業とリースなどを通じて取引があるという強みを活かそうという狙いのようです。

さらにスタートアップ企業のPayment Technologyが提供する「前払いできるくん」というサービスを業務提携して提供する形で、東京スター銀行やジャパンネット銀行なども「前払いサービス」を始めています。

法的な整備が求められるというものの、今後金融業界でもこの新しいサービスを提供するケースが増えていきそうです。

まとめ

かつて銀行は「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」と揶揄されたものでした。もちろん本来求められるのは「雨が降ったら傘を差し出すサービス」です。

その点でも金融業界が「給料前払いサービス」に前向きに取り組むことは、高く評価されていいのではないでしょうか。