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注目記事2019.05.15

“金融業界はノルマがきつい”は本当か?

「金融業界はノルマがきつい…」。

あなたもそんな噂を耳にしたことがありませんか? 就活をしていると、どんな業界を志望するのであれ、気になる噂・マイナスの噂を耳にするものです。金融業界については、“ノルマ”に関する噂もその一つでしょう。

悪い噂ほど耳に留まってしまうのは仕方のないことですが、あまり気にされないことをおすすめします。

ノルマとKPI、その違いは?

ノルマという言葉には、確かにあまりいいイメージがありませんね。社会人の中には、ノルマと聞くだけで拒絶反応を示す人もいるようです。

ノルマとは、英語で書くと「norma」。そもそもの語源はロシア語の「Норма」で、第二次大戦後、シベリアに抑留された日本人が復員後に伝えた言葉とされています。彼らは元日本軍捕虜で、当時のソ連によってシベリアでの労働を強いられました。強制収容所では木の伐採をロシア兵から命じられる際に「ノルマ」という言葉を使われたそうです。

つまり「強制労働に伴う責任達成量」が本来のノルマの意味。これが転じて、仕事で達成すべき目標数値のニュアンスで使われるようになったわけです。確かに“強制労働”が関係したとなると、あまりいい響きの言葉とは言えませんね。

こうした暗いニュアンスを嫌ってか、最近では「KPI」という言葉も使われるようになりました。KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、重要業績評価指数という意味で使われます。例えば「××万円の売上げ目標を達成するためには××件の受注というKPIを達成しなければならない」という使われ方です。

ところがこのあたりが混同されてうやむやになってしまい、ノルマという言葉では印象がよくないのでKPIと言い換えるケースが増えています。「無理めな目標=ノルマ」「現実的な目標=KPI」と理解する人もいるようです。

顧客本位の徹底が求められる

もちろん金融業界に限らずどんな業界であっても目標はあります。ビジネスに限りません。スポーツで記録を出す、メダルを取るというのも目標ですし、テストで満点を取る、志望校に合格するということも目標です。その大きな目標を達成するために、目の前の小さな目標を設定し、クリアしていくというのは極めて正しいことですから、その意味ではノルマは決して悪いことばかりではありません。

そうしたアプローチではなく、達成困難な数値目標を強制されるようなケースの目立つことが、「ノルマ=無理」というイメージにつながっているのでしょう。

そうしたノルマが設定されることは、大きなマイナス面につながります。一番の問題は、目の前のノルマが達成できなければ人事評価でマイナスになってしまうという恐怖感から顧客本位の営業姿勢を忘れてしまうことです。

実際、金融庁では2016年に、銀行が行員に過度なノルマを課していないか監視を強め、顧客本位の業務運営を徹底するよう求めました。ノルマが厳しすぎると最前線の行員が手数料の高い商品を勧めたり、不要な借り入れを企業に要請しかねないからです。

このコーナーでも以前「フィデューシャリー・デューティー」という言葉をご紹介しました。これは、金融機関は顧客の利益を最大化するように努めなければならないという言葉で、日本の金融機関は「フィデューシャリー・デューティー」の徹底を図らなければならないとされています。このことからも、行きすぎたノルマは、決してほめられたことではないとわかります。

ノルマ廃止の動きが広がる

このようにノルマにはマイナス面も大きいことから、最近では金融業界でもノルマを廃止するケースが出てきました。金融庁の方針を受けてまず地方銀行がノルマを撤廃。目先の利益よりも顧客との中長期的な信頼関係を大切にする方針を打ち出しました。

これに続いたのが証券会社で、ある証券会社ではノルマを廃止して顧客が営業員を採点する人事評価制度を導入しました。そして最近ではメガバンクがノルマの廃止を発表。顧客の運用残高をどれだけ増やしたかで行員を評価するように切り替えました。

もっともノルマを廃止した結果、明らかに営業力が落ちた、という見方も出ており、必ずしもプラス面だけではないようです。

それでも人材の採用難や店舗の減少といった背景の中、ノルマ廃止の流れは今後さらに強まっていくと見られています。

まとめ

ノルマ=無理めの営業、というイメージは強くあります。そもそもの語源が“強制労働”につながるものであるということもマイナスの印象です。しかし最近では顧客本位の姿勢が金融機関に強く求められるようになったこともあり、最前線の営業員に対してノルマを課すことは見直されるようになってきました。

今後も、ノルマ廃止の流れは続きそうです。