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注目記事2019.04.03

日本はオーバーバンキング?

春。新年度を迎え、大学進学のために、あるいは就職のために、多くの人が地方から都市へとやってきます。そんなとき、新しい住まい選びの基準の一つとなるのが銀行の支店の存在。

今ではコンビニでお金がおろせるし、ネットバンキングやキャッシュレス決済もおなじみとなったので、以前に比べて銀行の窓口に足を運ぶ機会は少なくなりましたが、それでもやはり金融機関が近くにあるかどうかは暮らしの利便性に直結します。

そんな目で改めて駅前の金融機関を眺めてみると、ちょっと大きな駅になるとけっこうな数の金融機関があると感じませんか? 特にターミナル駅ともなると、駅前交差点の4つの角すべてに銀行の支店がある…などということも。どうやら日本は金融機関の数がずいぶん多い国のようですね。

日本の金融機関店舗は断トツで多い

「日本って、銀行が多くて便利だよね」。皆さんが感じるその実感は間違ってはいません。実際、日本は「オーバーバンキング」と言われています。

オーパーバンキングとは、文字通り金融機関の数が多すぎるという意味です。ただし、どの基準を超えるとオーバーバンキングなのかといった正式な指標があるわけではありません。とはいえ、日本の金融機関は多すぎる、つまり日本はオーバーバンキングであるというのは、日銀も指摘していることです。

日銀では半年に一度「金融システムレポート」を公表していますが、2017年10月の「金融システムレポート」では、下記のグラフを示しながら、「日本の金融機関の店舗数は、郵便局数まで含めるとオーバーバンキングとされるドイツとほぼ同水準」と指摘しています。


さらに、可住地面積あたりの金融機関店舗数では日本は突出して多くなっている。つまり森林や湖など人が住めないエリアを差し引いた面積で比べると日本は断トツで金融機関店舗数が多くなっていることがわかります。

このことは、狭い国土に銀行の店舗が密集していることを示し、日本では銀行の店舗が常に激しい競争を強いられていることを示しています。

少子高齢化が進み、企業の数も減っていく中、このままではオーバーバンキングはさらに進んでいくことになるかもしれません。

店舗間で激しい競争を強いられる

銀行の店舗数が多いことは私たち生活者にとっては利便性につながっていますが、銀行にとってみれば決していいことではないのです。

その理由は、最前線の店舗が常に激しい預金獲得競争を強いられるため、預金に関連した手数料収入を上げづらいことにあります。つまり日本の銀行は手数料収入では成立しないビジネスモデルとなっており、結果として融資に頼らざるを得なくなり、貸し出し競争に拍車がかかってしまったのです。

ご存じのように日銀の金融緩和による低金利環境が続いているため、貸出の利ざやは縮小する一方。銀行の経営は厳しさを増す一方です。

過当競争で低収益に、という流れは決して金融機関に限ったことではありませんが、そこにマイナス金利という逆風が吹き荒れたことで、金融機関は苦境にさらされているわけです。特に高齢化が進み、地域経済が活力を失ってきた地方において、地方銀行はこうした影響をより強く受けています。

地方銀行が経営統合によって生き残りを図ろうとするのは当然の選択であり、その結果、地域の金融機関の数を減らしていこうとするのも自然なことでしよう。

求められるのはサービスの独自性

ただし、単純にオーバーバンキングは問題だ、と決めつけるわけにはいきません。なぜならオーバーバンキングの本質的な問題は、“同じ地域で同じようなサービスを提供している”ことにあるからです。

つまり横並びのサービスの金融機関ばかりが増えることがオーバーバンキングなのであって、各金融機関がニーズにきめ細かく対応した独自のサービスを追求すれば、それは決してオーバーバンキングにならないということです。

実際、ターミナル駅の駅前交差点の角に立つ銀行の支店を見たら、「どれを選んでも同じじゃないの?」という印象を持つでしょう。そうではなくて、それぞれの銀行の特徴が明確であれば、選択肢の幅は広がっていくはずです。

そうした本質的な差別化を求められているのがこれからの金融機関。オーバーバンキングであるという現状認識は間違いではありませんが、“数”だけにとらわれることなく、“質”の面からの対応が今後重要になっていくことでしょう。

まとめ

オーバーバンキングとされる日本の金融機関。店舗が密集しているため預金獲得競争は激しく。結果として手数料に頼らないビジネスモデルとならざるを得ませんでした。それがマイナス金利下で、経営体力を奪われる遠因ともなっています。

今後はオーバーバンキング状態の解消とともに、特徴あるサービスの追求によって金融機関ごとの差別化を図っていくことが重要となります。