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注目記事2019.02.20

金融機関も“核”根絶の姿勢を明確にする時代に

ESG融資については以前ご紹介しました。

「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字をとったESGは、企業を評価する重要な指標として使われるようになっています。金融業界においても、企業への融資を行う際の判断基準の一つとしてESGが位置づけられるようになりました。この流れでさらに注目されるキーワードが「核融資」です。

金融機関の社会的責任

“地球温暖化対策に積極的に取り組んでいる(E)”
あるいは
“女性の活用が進んでいる(S)”
さらには、
“取締役の構成が適切である(G)”
そんな基準をもとに企業への融資の是非を判断するのが、ESG融資。

社会的存在としての企業がESG推進に取り組むことは非常に有意義なことですが、金融機関が融資を通じて企業のそうした姿勢を支援することも、同時に有意義なことといえます。それは金融機関としての社会的責任とさえ受け止められるようになってきました。

同様に注目されているのが「核融資」です。

りそな銀行を傘下に持つ、りそなホールディングスでは、2018年国内の大手金融機関として初めて「核兵器・化学兵器・生物兵器等の大量破壊兵器や対人地雷・クラスター弾等の非人道的な兵器の開発・製造・所持に関与する先や、国内外の規制・制裁対象となる先、またはその虞のある先への融資は行いません」と宣言。大きな話題を集めました。

人類共通の願いに応える姿勢

核兵器の開発・保有・使用などを法的に禁止する国際条約「核兵器禁止条約」が採択されたのは2017年7月で、2018年11月現在、69ヵ国が署名し、19ヵ国が批准しています。

「核兵器禁止条約」では「援助」も禁止しており、大きな枠組みの中で見れば、核兵器の開発や保有などに関連する企業に融資するということは、「援助」の一環であると受け取られかねません。市民からお金を預かっている金融機関として、それは避けたいところです。

核廃絶は人類共通の願いでもありますから、りそなホールディングスの宣言には拍手が送られるべきでしょう。追随する金融機関が増えることを願う声が広がっているのも自然なことです。

もちろん現代社会では企業活動が多様な分野に及んでおり、地球規模での調達・購買が行われるようになっていることから、融資先企業が核関連の事業にどう関わっているかが見えにくくなっているのも事実です。そんな中で核関連企業への融資を行わないと宣言することは決して簡単ではありません。それでも、りそなホールディングスが一歩を踏み出したことは、英断と言えます。

もはやリスク対策の一環に

実際、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)とその傘下のNGOが行った調査では、世界の20の核兵器製造企業に329の金融機関が投融資を行っており、日本の7つの金融機関もその中に含まれていると発表されました。これに対する各金融機関の反応は「今は融資していない」「与信を禁止している」「個別取引については答えられない」など様々。その是非はともかくとして、こうした問いかけがされること自体、金融機関にとってはもはや“リスク”の一種であるとの認識が広がっているようです。

「社会的なリスクとなり得る企業への投融資を行わない」という姿勢を示すことは、一般生活者から信頼を得る上で避けられないことです。りそなホールディングスのように、一歩踏み込んでより積極的な姿勢を示すことは、そうした企業戦略の上で理にかなったことと言えます。

もちろんこうした流れは金融業界に限らず、あらゆる業界に広がっていくことでしょう。金融業界がこうした大きなトレンドをリードしていくことになるのは間違いのないことのようです。

まとめ

核兵器製造などに関連する企業に投融資を行わないと宣言した、りそなホールディングス。その英断には拍手が送られています。

核関連企業に対する国際的な視線がますます厳しくなっていく中、日本の金融機関にとって、社会的なリスクとなり得る企業への融資を行わないという姿勢を明らかにすることは重要な戦略となっています。追随する金融機関が増えてくるのではないかとみられています。