新卒学生のためのインターンシップ・就活準備サイト

Articles
注目記事2019.01.16

景気回復は戦後最長へ。景気と金融政策の関係は?

「世界には4種類の国がある。先進国と途上国、そして日本とアルゼンチンだ」

そんな言葉をご存じですか? 1971年にノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツが1960年代に語った言葉です。

もちろんジョークなのですが、大戦後に奇跡的な復活を遂げ、世界の先進国入りを果たした日本について語る際によく引き合いに出される言葉です。その一方でアルゼンチンは豊かな資源がありながら衰退した国家の典型として引き合いに出されるのですが…。

そう語られてからすでに半世紀以上が経つ日本。「失われた30年」とも言われる平成の30年が終わろうとしている今、日本はどのように進んでいくのでしょうか。景気と金融の関係について、改めて考えてみます。

「いざなみ景気」を超えることは確実

昨年12月、政府は「景気回復は戦後最長となる見通し」という見解を発表しました。

2012年12月から始まった景気回復は2018年12月で長さが6年1ヵ月に到達。前回の景気回復である2002年から2008年まで続いた戦後最長の景気回復に並んだ可能性が強くなりました。

米国と中国の貿易摩擦に伴う逆風を受けつつも、この勢いは当分続くとみられ、2019年1月で戦後最長の景気回復となるのはほぼ確実です。10月には消費税率の10%への引き上げが予定されていますが、その直前の駆け込み需要などによって、今年前半は個人消費も堅調そうです。

ちなみに前回の2002年から2008年までの69ヵ月間の景気回復は「いざなみ景気」と呼ばれ、これに続く戦後2番目の長さとなる1965年から1970年までの景気回復は「いざなぎ景気」と呼ばれています。今回の戦後最長を更新しそうな景気回復は、何景気と呼ばれることになるのでしょうか。

「世界には4種類の国がある」と発したサイモン・クズネッツがまだ生きていたら、「いざなぎ景気」を超える今の日本を見て、なんと口にしたことでしょう。

金融危機のリスクは脱したか?

もちろん不安材料がないわけではありません。すでに紹介したように米国と中国の貿易摩擦は世界経済全体に暗い影を落としていますし、日本経済だけをとってみても消費増税後の消費の落ち込みはかなり大きいはずです。

また、10年ごとに金融危機が訪れるという説は根強く、1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマンショックと、これまでほぼ10年の周期で金融危機が訪れています。幸いにして2017年、2018年と大きな金融危機は起きませんでしたが、だからといって決して油断はできないという指摘もあります。

金融政策が及ぼす影響は

さて、景気と金融政策については、どのような関係があるのでしょうか。

一般的に、景気が低迷すると金融政策によって金利が引き下げられ、金融機関は低い金利で資金を調達できるので、企業や個人への貸し出しについても金利が引き下げられます。すると企業は設備投資の資金や人材確保、仕入れに必要な資金などを調達しやすくなります。個人も、住宅取得の資金が借りやすくなります。

その結果経済活動が活発となり、それが景気を上向かせることになります。同時に物価が押し上げられて、デフレからの脱却へと結びつきます。 こうした金融政策を「金融緩和政策」と呼びます。

一方で、景気が過熱していくと、物価がさらに上がってインフレとなり、ますます資金需要は高まって金利も上昇します。すると金融機関は高い金利で資金調達しなくてはならず、企業や個人への貸し出しでも金利が引き上げられます。企業や個人はお金を借りにくくなり、経済活動は次第に抑制されて、景気の過熱が抑えられることになります。これに伴って物価は押し下げられます。 こうした金融施策は「金融引き締め政策」と呼ばれます。

このように景気や物価に金融政策は大きな影響を及ぼします。 ご存じのように現在は「金融緩和政策」がとられており、しかも「極めて低い長期金利の水準を維持する」と日銀が明言している状態です。そのため2019年も現在の金融緩和状態が続くとみられます。

まとめ

戦後最長だった「いざなみ景気」を超える景気回復が確実となった日本経済。米中貿易摩擦や消費増税などの懸念材料はあるものの、当分はこの状態が続きそうです。

こうした景気の動きに、金融政策は大きな影響を及ぼしています。日銀も「極めて低い長期金利の水準を維持する」と明言していることから、2019年も景気拡大の局面となるでしょう。