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注目記事2018.11.07

情報銀行と金融業界

情報がカネになる…。

そう聞くと何やらアンダーグラウンドなイメージもします。けれど、政府の後押しで、情報がお金を生む仕組みが誕生しようとしています。それが「情報銀行」。これに対してリアルな銀行をはじめとする従来の金融機関はどんな動きを見せているのでしょうか。

動き出した「情報銀行」の構想

「情報銀行」とは、個人のデータを本人の同意のもとで収集・管理・提供する仕組みのこと。例えばあなたが通販サイトでこれまでに何を買ったかという記録を「情報銀行」に提供すると、新しく通販サイトを立ち上げようという企業がそのデータを「情報銀行」から受け取ります。

このように個人の情報が流通する仕組みが、これからきちんとした枠組みの中でつくられていきます。 具体的には、個人データの収集・管理をする「情報銀行」の事業者認定に関する説明会を、総務省が2018年10月に実施しました。12月から認定申請の受付が始まり、2019年3月頃には認定される見込みです。

日本の法律では、個人を特定できない情報は勝手に売買してもいいことになっています。逆に、個人を特定できる情報は、本人の同意がなければ勝手に利用することはできません。 「情報銀行」は、個人の情報について明確なルールのもとで適正に扱う仕組み。個人は安心して自分の情報を提供することができます。もちろんその際には何らかの対価も得られるので、“自分の情報を売る”ということが個人でも堂々と行えるようになります。

ただ、目的はあくまで個人情報の管理についての意識を高めるため、及び企業の製品やサービスを個人に届けやすくするためであり、情報をお金に換えることが目的ではありません。この点は注意が必要です。

金融業界からも参入の動き

「情報銀行」の構想は官民一体で進められており、審査・認定は日本最大級のIT団体の連合体「一般社団法人 日本IT団体連盟」が行います。「情報」を扱うだけに、IT団体が中心になるのは自然なことでしょう。そして「情報銀行」への参入の意思を明らかにしているのは富士通や日立製作所などのIT企業ですが、それらに並んで三菱UFJ信託銀行も参入を表明しました。 つまりリアルな銀行も「情報銀行」に参入しようというわけです。

実は三菱UFJ信託銀行は、以前より個人のデータを預かって本人の同意のもとで他企業に提供するという事業の構想を明らかにしており、その核となる技術については国内で特許を出願済みです。また、10月に開催されたITや家電の見本市「CEATEC JAPAN 2018(シーテック ジャパン 2018)」では、その具体的な仕組みが公開されました。

これはセンサーが内蔵されたスニーカーを履いて歩くと、GPSによる位置情報や歩いた距離、力のかけ具合などが計測され、そのデータはサーバにためられるというもの。企業がこのデータを有効活用することで、個人に向けた最適なフィットネスプランなどが提供されると考えられます。

そもそも金融業は情報産業

もちろん「情報銀行」構想に対して前のめりなのは三菱UFJ信託銀行だけではありません。メガバンクをはじめ、金融業界全体で高い関心を示しています。 改めて言うまでもありませんが、そもそも金融業とは情報産業の側面も強く持っています。

金融業界の業界用語の一つに「CIF(シフ)」という言葉があります。Customer Information Fileの略で、顧客情報ファイルという意味です。CIFには本人確認のため氏名、住所、生年月日、職業等が記録され、CIF番号は顧客管理の最も基本的な番号として利用されています。さらには学歴や年収、家族構成、過去の融資歴など、実に多様な情報が蓄積されています。

つまり豊富なCIFを持つ金融機関は情報産業でもあるのです。

そうした情報力を強みに事業を展開してきた金融機関にとっては、「情報銀行」の存在は大きな脅威と映るでしょう。異業種と金融業界の壁が取り払われつつある今、「情報銀行」への参入をきっかけにIT企業が金融業界への侵攻を一層強めていくことも考えられます。

その圧力に対して、CIFという武器を持っている金融業界がどのように対抗していくか気になるところです。

まとめ

個人の情報が大きな価値を生む「情報銀行」構想が走り始めました。IT業界からの参入に加え、金融業界もその動きには大きな関心を持っています。 金融業とは、そもそも情報産業の側面も持っています。これまで蓄積してきた膨大な個人情報を武器として、今後金融業界が「情報銀行」構想とどのように向き合っていくか注目されます。