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注目記事2018.08.01

両替手数料有料化の先に見えるもの

「水と安全はタダだと思っている」。かつて日本人を揶揄する際によく言われた言葉でした。これにプラスして言われていたのが「サービス」。つまりサービスは無料、というのも日本らしい文化と言われてきたのです。チップはその好例で、サービスに対してチップを払うという習慣は日本人にとって長らくなじめないものでした。

しかし最近では事情も大きく変わってきて、かつては無料だったものもどんどん有料化が進んでいます。銀行の場合だとその代表が両替の手数料。その背景にある事情とは何でしょうか。

「両替お断り」のお店が増えた理由は

「いけない、明日は同僚の結婚式だ。ご祝儀を用意しなくちゃ!」

社会人になると、こういう局面が多くなります。ご祝儀は手が切れそうにパリッとした新札で用意するのが常識(ちなみにお札を偶数の枚数にするのは縁起が悪いとされるのでNG。奇数が常識ということも覚えておきましょう)。そこであわてて駆け込むのが近くの銀行の窓口ということになります。

しかし、この両替が有料になっていたことはご存じでしたか?

例えば三菱UFJ銀行の場合、同一金種の新券への両替の場合(窓口)、口座を持っていれば10枚までは無料ですが、口座がなければ手数料は540円。11枚以上になると、口座を持っていても540円の手数料がかかります。

いずれも2017年までは無料でしたので、今年になって窓口で両替を頼んだ人は、「えっ、手数料!?」と驚いたことでしょう。

結婚式のご祝儀を用意するなんていうことは一年に何度もあることではないのでたいした影響はなさそうに思えます。ところが、小さなお店を経営している商店にとっては大打撃。

三菱UFJ銀行に口座を持って普段から取引をしている場合でも、お客様へのお釣りのために小銭を用意しようとすると手数料がかかってしまうのです。極端なことを言えば、100円玉×11枚=1,100円を全部10円玉に両替してもらおうとすると、それだけで540円がかかってしまうのですから。こうなってくるとコツコツと小さな商いをしている商店はひとたまりもありません。

そういえば最近レジに「両替お断り」や「1000円札が不足しています」と掲げているお店が増えたような気がしませんか? そこにはこんな理由があったのですね。これからは小さな商店ではなるべくお釣りがいらないように小銭を用意したいものです。

通帳を持っているだけでも手数料が?

さて、有料化となったのは、両替の手数料だけではありません。

振込手数料の値上げを発表したのは、ゆうちょ銀行。ネット通販などの振り込みに使われる「通常払い込み」の手数料を2019年4月から値上げすることにしました。 それ以前に岩手銀行や山形銀行、北日本銀行などの地方銀行も振込手数料を値上げしています。

今議論されているのは、預金口座の維持手数料です。預金口座を持っている、つまり既に銀行の得意客であっても、しっかり手数料を取るという考え方です。実は口座を維持するために必要なコストは、一般に想像されるよりかなり重いというのが事実です。 例えば通帳には1冊あたり200円の印紙税が毎年かかりますし、印刷費用も無視できません。銀行によって仕様も異なるため、ATMの対応費用も必要です。

こうしたことから「通帳を有料に」という声が上がってきているのも事実です。実際、残高が限りなくゼロに近い通帳を持っている方は珍しくありませんが、そういう場合も毎年200円の印紙税を納めなくてはならず、銀行にとっては大変に迷惑な話なのです。

有料化の先に見える狙いとは

こういった流れの背景にあるのは、低金利の影響で銀行の収益力、つまり“稼ぐ力”が下がっており、手数料を新たな収益源にしようという狙いです。本来は有料であるべきサービスがタダで提供されてきたのだから、それを有料にすることは、それほど不自然とは言えません。海外では口座維持手数料が採用されているケースが多くあります。

さらに一歩踏み込んで考えてみると、こうしたサービスの有料化には大きな抵抗が予想されますが、「窓口で手数料を払うよりもネットで済ませたい」という人が増えてくるだろうという点が見逃せません。支店やATMの維持コストは銀行にとって大きな負担となっていますから、低コストのネットへの移行が進めば、その負担は軽減されることになります。人員の削減も進むでしょう。

サービスの有料化という動きを、こうした大きな流れの中でとらえてみると、銀行の置かれている状況や今後の方向性というものが見えてくるのです。

まとめ

大手金融機関が相次いで踏み切った両替の有料化。今後は預金口座を維持するための手数料が発生することも予想されます。こうした有料化の流れは、手数料収益の増大と支店維持コストの軽減というメリットを銀行にもたらすでしょう。