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注目記事2018.07.25

銀行員にとっての「出向」とは?

ビジネスパーソンにつきものの「出向」。皆さんも耳にしたことがおありでしょう。残念ながら、多くの場合、出向という言葉にはマイナスイメージがあるようです。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。銀行員と出向について、考えてみます。

出向と転籍

銀行員の出向と聞くと、すぐにイメージされるのが例のドラマ。「倍返し」という台詞が話題になった銀行ドラマです。

このドラマでも出向は重要なキーワードとなっており、しかも大変にマイナスな描かれ方をされていたために、「ドラマを見た実家の母親が“お前も土下座をさせられているのか”と慌てて電話をかけてきた」と苦笑いを浮かべる人もいたとか。

もちろんあれはドラマの話。現実のビジネスの世界では、土下座なんてあり得ませんからご安心ください。

さて、出向とはどういう制度なのか、皆さんはご存じですか。簡単に言えば自分の所属する企業を離れて、業務命令として別の企業で働くことです。

このとき、自分の会社に雇われたまま別の企業で働く場合が「出向」。自分の会社をいったん辞めて別の企業に雇用されるのが「転籍」です。

出向の場合でも、出向先企業の命令のもとで働くことが条件となります。例えば、一時的に別の企業の業務をサポートするために出向いて働く場合は、出向に当たりません。単なる“出張”となります。

マイナスの出向、プラスの出向

金融業界、特に銀行の場合、その安定性は大きな理由です。実際、就職動機にも安定性をあげる割合は多くを占めます。ただ、当然のことながら同期で入社した全員が同じタイミングで出世できるわけではなく、全員が支店長になれるというものでもありません(他の企業でも同じことですが)。

そこで一般的に40代から50代にかけて、管理職になれなかった行員が、同じ系列のグループ会社や取引先に出向となるケースがよくあります。この場合、銀行での出世が見込めないことが理由ですから、いわゆる“片道切符”の出向となります。つまり出向先で定年まで働くことになるのです。一般的にマイナスイメージをもたれるのは、この出向の場合です。“左遷”に近いニュアンスもあります。

しかし、そうでない出向もよくあります。代表的なのが、経験を積んでスキルアップするための出向です。

例えば業績の悪い取引先の立て直しのために出向いていくケースです。業績の低迷している取引先でも、実はその原因が不動産投資の失敗であったりして、技術や人材そのものは大変優秀である、というケースはよくあります。そんな取引先に出向いて、経営陣に対して大なたを振るい、業績の立て直しを行います。

たとえ時間がかかっても立て直しができれば大きな成功体験を手に入れることができるでしょう。また、財務省などの公的機関に出向するケースもあり、この場合は、若いうちに様々な人脈を築くことができるため、むしろ将来を期待されての出向ということになります。

このように一言で出向といっても背景は様々で、決してマイナスのものばかりではないということを覚えておいてください。

出向=幹部候補というケースも

さて、40代を過ぎてからグループ会社に出向するのは片道切符と紹介しましたが、最近はそうとも限らなくなってきました。例えばみずほフィナンシャルグループでは、40代の支店長を関連会社に経営陣として出向させ、早期にマネジメント経験を積ませることで、将来の幹部候補として育てるという取り組みを始めました。

出向を命じられて肩を落とすのではなく、「チャンス到来!」とモチベーションをアップさせるケースが今後増えてくるかもしれません。こうした動きも、変革期を迎えた金融業界ならではといえるでしょう。

まとめ

マイナスのイメージをもたれがちな出向。確かに出世競争に敗れた場合の“片道切符”としての出向はよくある話です。しかしそればかりではありません。スキルを磨くための出向、経験を得るための出向、人脈を広げるための出向もあります。特に若手のうちは、出向こそチャンスと受け止めてもいいでしょう。

また、将来の幹部候補として鍛えるためにあえて出向させるケースも出てきました。出向=左遷というイメージはもはや当てはまりません。