新卒学生のためのインターンシップ・就活準備サイト

Articles
注目記事2017.09.06

信託銀行と普通銀行の違いは?

○○銀行の看板が見えたのでATMでお金を下ろそうと思って行ったら、実は○○“信託”銀行だった──。そんな経験を持つ方は多いのではないでしょうか。信託銀行ってよく見かけるけれど、銀行とどこが違うのか、ご存じですか? 銀行はよく知っているけれど、信託銀行には一度も入ったことがないという人も少なくないでしょう。意外と知られていない信託銀行について、改めてご紹介します。

「遺言」でも注目される信託銀行

「信用して委託する」と書いて「信託」。この言葉通り、信頼できる人に対して財産の管理などを委託することが、信託です。 皆さんは、「遺言」をご存じですね? テレビドラマなどでは資産家が亡くなった後にその財産の分け方を巡って身内で争いが起こる様子などが描かれることがあります。自分の死後にそうした醜いトラブルが起きないようにと、財産の分け方をあらかじめ明らかにしておくのが遺言です。最近ではこの遺言を信託銀行に預けるケースが増えており、信託銀行もセミナーなどを開いて啓蒙に務めるなど、遺言を大きなビジネスととらえています。

このように預貯金や土地などの財産の管理・処分を委託されることは、信託銀行にとっての大きな存在意義と言えます。信託銀行が資産の管理・処分を引き受けてくれることで、醜い相続争いなどを心配することなく、資産家の方も安らかな最期を迎えられるわけです。

財産のあるところに信託銀行あり

こうした信託の考え方は、人間が財産というものを持つようになってから生まれました。紀元前1805年の古代エジプト人によって書かれた遺言書の中に、既に信託の考え方を読み取ることができたそうです。(*1)

日本の信託制度は明治の後半にアメリカから導入されたとなっており、法律に「信託」の文字が初めて登場したのは明治33年に制定された日本興業銀行法でした。これは事業会社を対象とする信託制度です。一方、個人の財産を扱う信託会社が設立されたのは、それより少し遅れた明治39年のこと。東京信託株式会社という会社が、日本の信託会社の第一号とされています。(*2)

銀行業務と信託業務のすべてが可能

さて、信託銀行と銀行の違いとは何でしょうか。

最も大きな違いは「信託銀行は、銀行業務と信託業務のすべてを行うことができる」という点です。 信託銀行は、普通の銀行と同じように預金、貸出、為替などの業務を行っています。それに加えて、貸付信託、金銭信託、動産や不動産の信託、土地信託、証券代行、不動産売買の媒介、鑑定評価といった財産の管理業務も行っています。さらに株主の管理など、上場企業の証券代行業務も行っています。

このように信託銀行が銀行業務と信託業務のすべてを行うことができるということは、“兼営法”と呼ばれる法律によって定められています。

利用者の裾野が広がりつつある

信託銀行の店舗をのぞいたことのある方は、普通の銀行とはちょっと雰囲気が違っていることに気づかれたでしょう。ソファとテーブルが置かれ、ゆったりと腰掛けながら話をする、サロンのような演出をしている信託銀行も少なくありません。

そうしたことから信託銀行に「敷居が高い」というイメージを持つ人は多いようです。実際、信託業務そのものがある程度の財産を持つ人、いわゆる富裕層を対象としており、法人についても大企業の取引が中心です。「プライベートバンク」に近い存在と言ってもいいでしょう。

プライベートバンクとは、富裕層を対象にその資産を預かって運用する金融機関のことで、スイスで生まれたとされています。預かる資産は最低でも10億円と言われることもあり、一般庶民には縁のない存在です。そこまでは行かないとしても、信託銀行にもそうした側面があることは事実でしょう。

ただ、少子高齢化によって多くの人が社会保険制度に不安を感じていることから、自助努力による資産形成のニーズは高まっており、今まで以上に信託銀行の利用を希望する人は増えていくはずです。冒頭で紹介した円滑な相続への関心も高まっています。 信託銀行の敷居が低くなり、より多くの人がその敷居をまたぐようになってきたのは事実です。こうした流れは今後さらに加速されるでしょう。

まとめ

「信用して委託する」のが信託銀行。その業務は、一般の銀行業務に加えて、信託業務も行えることが特徴です。かつては富裕層に特化した金融機関というイメージが強かった信託銀行ですが、資産形成への関心が高まる中、今後はより多くの人が利用するようになるとみられています。


参考:信託協会