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注目記事2017.06.14

クオンツってなに?

皆さんは金融・証券業界で「クオンツ」という職業があるのをご存知でしょうか? クオンツは「Quantitative:数量的」という言葉から派生した用語で、金融業界で培ってきた「経験」や「嗅覚」によって金融商品を取引せず、高度な数学・物理学を駆使して、市場動向や企業業績を分析・予測したり、投資戦略や金融商品を開発・考案、あるいはそれを行う数理分析専門家のことを言います。高度な金融工学の知識が必要となる職業ですが、実際の業務や求められるスキルとは何かを解説していきます。

ロケットサイエンティストがクオンツ誕生のきっかけに

クオンツの起源とされているのは1980年代頃にロケット工学を専攻した数学者や物理学者がスペースシャトル開発の台頭や宇宙開発費自体の削減の影響もあり、ロケット開発から離れ、ニューヨークのウォール街の大手証券会社や金融会社に転職し、金融分野に理数的手法を導入したのがクオンツの起源とされています。

近年ではその高度な数学的手法や数理モデルを使って、デリバティブ取引(キャリタスファイナンス「デリバティブって何?」参照)や、リスクマネジメントなど、様々な分野で盛んに用いられるようになっています。

クオンツの2つの役割とクオンツファンド

クオンツは、デリバティブ(金融派生商品)などの商品設計や価格決定などを担当する「アイボリータワー・クオンツ」と、市場動向を分析・予測して金融取引を支援する「クリスタルボール・クオンツ」の2つに大きく分けられます。どちらも人間の直感や相場感は一切使わず、確率解析論、確率論、偏微分方程式といった数学的技術を駆使してリスクヘッジやより利益を得ることを突き詰めます。

また、過去のデータや企業業績などを分析し、予測モデルを構築する人を「クオンツアナリスト」といい、定量モデルによって銘柄の魅力度を判断し、コンピューターで数量的に運用する手法を「クオンツ運用」、その運用手法を使ったファンドを「クオンツファンド」と呼びます。

クオンツの分析・予測は万能ではない。世界的金融危機を起こすきっかけに?

クオンツファンドでは、高度な数学的テクニックを駆使し、運用に携わる人間の相場感を一切排除し、金融市場や経済情勢などの大量データをコンピューターで分析してつくられた「数理モデル」に従って運用する投資スタイルのことを言います。人間の直感・感情・立場にとらわれず機械的な判断を下すことにより、自分が取引している金融商品が高い確率で利益を得られるようにも思えますが、やはりどんな仕組みも完璧なものはありません。

2007年夏のサブプライムローン(※)問題では、大手金融機関が扱ったクオンツファンドが多額の損失を計上して2008年のリーマン・ショックを招く要因となりました。クオンツの運用面の弱点として指摘されるのは、過去のデータに基づくので市場環境の変化(想定外の事態など)に弱い、運用ルールが硬直的である、他者に真似されやすい、といったことが挙げられているようです。

クオンツ運用の強みは、人間の感情や立場を一切介入せず、数学的見地を利用してコンピューターにデータを入力して取引の判断を導き出すのですが、あらかじめその判断や基準は人間がプログラムを書く必要があります。

「こうすれば儲かる」とか「これであればリスクは少ない」といったルールは、過去の大量のデータや理論の裏付けを参考に開発・考案するかはクオンツの裁量に依存する部分もあります。1990年代以降、AI(人工知能)を使って判断基準もコンピューターにつくらせようという試みが行なわれており、この辺りの取り組みも近年技術が飛躍的に向上している分野なので注目しておきたいところです。

クオンツになるためには

クオンツは理工系出身者が大半を占めており、数学・物理学の修士号やプログラミングスキルが備わっていないと難しい世界といわれています。それほどまでに高度な数理的能力と同時に金融知識の両輪が求められます。また「クオンツ」として採用している日本の金融機関は採用人数が少ないので、外資系金融も視野に入れて活動する方がよいでしょう。いずれにしてもとても狭き門ですが、金融商品の複雑化・拡大化に伴い今後、クオンツの果たす役割がますます重要になっていくことが考えられます。

理工系の学生であれば、アカデミックな専門的知識を金融の実務に落し込み、業務として行う事ができるので、仕事のやりがいとしてはこれ以上ないと言えるのではないでしょうか?

※:サブプライムローン(米: subprime lending) 主にアメリカ合衆国において貸し付けられるローンのうち、サブプライム層(優良客(プライム層)よりも下位の層)向けとして位置付けられるローン商品をいう。