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注目記事2017.03.08

地方創生で金融機関が果たすべき役割パート① 「まち・ひと・しごと創生」とは?

安倍政権が掲げる経済政策のひとつが地方創生。最近特に話題にあがることが多いのですが、皆さんが企業研究や実際に就活する金融機関にとっても重要なキーワードのひとつだと言えます。「地方創生で金融機関が果たす役割」について3回のシリーズで解説します。第1回目は、地方創生の根幹となる「まち・ひと・しごと創生」とは何かについてです。

地方の人口減と東京一極集中への対策

今、日本では急速に人口の減少が進んでいるのは皆さんもご存じの通りです。2015年の国政調査では、日本の総人口は1億2,711万人で、2010年の前回調査に比べ94万7,000人も減少しています。

一方で、東京への一極的な人口集中は加速しています。同じく2015年に東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)では11万9,000人もの転入超過数を記録、人口は3,612万6,000人となり国内全人口の4分の1以上となりました。また、東京圏への転入超過数のうち9万人超が15歳〜24歳の若年層。さらに、近年では25歳〜29歳の東京圏への転入超過数も増加傾向です(2015年で前年比3,000人増の2万人)。

このように、若い世代を中心に地方から東京圏へ人口が集中することで、地方では著しい人口の減少が進み人手不足が深刻化しています。その結果、地方では経済の低迷が続き、生産性、所得水準、消費活動などさまざまな側面で東京などの大都市との格差が発生し、それがさらに地方からの人口流出を引き起こす、といった悪循環を生んでいます。

そして、この状況に歯止めをかけ、地方経済を活性化させるため2014年に発足した第2次安倍改造内閣は、地方創生(ローカル・アベノミクス)とも呼ばれる経済政策を掲げたのです。

地方活性化への総合戦略

今回のテーマである「まち・ひと・しごと創生」とは何か? これは、地方創生を推進するための総合戦略の総称です(※1)。

<「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立するとともに、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻す> といった総合戦略の基本概念からネーミングされているようです。

安倍内閣ではこの総合戦略の司令塔として、2014年に「まち・ひと・しごと創生本部」を設立。本部長は内閣総理大臣、副本部長は地方創生担当大臣がその職務を行います。

政策の基本方針

地方創生の総合戦略である「まち・ひと・しごと創生」は、2015年に基本方針を策定(2016年に一部改訂)、2016年より本格的に展開を開始しました。基本方針にはさまざまな政策が掲げられていますが、以下にいくつか例をご紹介します。

地域のしごと創生

ローカル・アベノミクスを実現するために、地域での仕事を創生するための政策です。例えば、欧米で一般的な観光地域づくりの舵取り役を担う法人DMO(ディスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の日本版を推進。また、ローカルサービスの生産性を向上するためのIoT活用や、地方を先導する人材を育成するための地方創生カレッジの創設などを目指しています。


地域へのひとの流れ

本社機能を地方に移転する企業に対し税制優遇する措置などで、企業の地方拠点を強化。また、文化庁の京都移転などが話題となった政府関係機関の地方移転、高齢者が移り住んでも健康でアクティブな生活が送れる地方都市を作るという「生涯活躍のまち(※1)」などの政策もあります。


地域の実情に応じた働き方改革

地域の実情に応じ長時間労働や雇用環境の改善などを行う「働き方改革」のために、各自治体でその方策を検討する「地域働き方改革会議」を設置。国ではそれを支援するために、有識者などを集めた「地域働き方改革支援チーム」も組織します。


地方創生版・3本の矢

情報・人材・財政の3方面(=3本の矢)について、地方への支援を政策に掲げています。情報面では、官民が保有する地域経済に関わるさまざまなビッグデータを「見える化」した地域経済分析システム(RESAS:リーサス)などを提供。人材面では各省庁へ相談窓口として地方創生コンシェルジュなどを設置。財政面では、新型交付金を創設。官民協働や地域間連携、政策間連携の促進や支援のための「地方創生推進交付金(平成28年度予算で1,000億円)」などを新たに設定しています。

ちなみに、まち・ひと・しごと創生本部では、これら政策により、2020年までの成果指標として、

若者雇用創出数30万人(2016年現在9.8万人)
女性の就業率77%(2015年で71.6%)
地方→東京圏転入6万人減、東京圏→地方転出4万人増
安心して結婚・出産・子育てができる社会を感じる人の割合40%以上(2013年19.4%)

などを基本目標として掲げています(※1)。


金融機関の役割

地方創生の総合戦略である「まち・ひと・しごと創生」ですが、金融機関にはどのような形で関わってくるのでしょうか?

2015年に「まち・ひと・しごと創生本部」では、金融機関に以下のような協力を要請しています。


(1)「地方版総合戦略」策定への協力

各地域で異なる人口動向や産業実態に応じ、客観的・具体的な成果目標を設定した地域ごとの総合戦略が「地方版総合戦略」です。「まち・ひと・しごと創生本部」では、各自治体がこういった戦略を策定することが地方創生には不可欠だとしています。そして、金融機関に対し、その策定への情報提供・分析・提案などの協力を要請しています。


(2)国や地方の総合戦略の実施に向けた協力

国や地方が策定した様々な総合戦略の個別施策への協力も要請しています。例えば、地域の産官学金労が連携した総合戦略推進組織などへの金融機関の人材参加などがあります。


(3)REVICや政府系金融機関との連携

地方企業の創業・成長支援、早期経営改善、事業再生支援などを行う官民ファンドがREVIC(地域経済活性化支援機構)です。「まち・ひと・しごと創生本部」では、地方銀行など地域金融機関から企業の事業再生担当として、REVICへの社員出向などの協力も要請しています。また、起業・創業する企業への融資を行う日本政策金融公庫など、政府系金融機関と融資を共同でおこなうなどの連携も依頼しています(※2)。

まとめ

金融機関が地方創生で果たすべき役割には、これら以外にもさまざまなものがあると言われています。特に、地方企業と密接な関わりがある地方銀行などの地域金融機関は重要で、地元企業が抱える課題の解決のために、そのノウハウを活かしたコンサルティングや創業支援など、多くの活躍が期待されています。

実際に、地域金融機関が地方創生に大きく貢献した事例も最近数多く出てきていますが、これについてはシリーズ2回目以降で紹介します。

出典
※1:内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部
まち・ひと・しごと創生基本方針2016の閣議決定について

※2:日本政策金融公庫
民間金融機関との連携