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機関投資家にはどんなところがある?

株式市場や為替市場のニュースなどでよく聞く「機関投資家」という言葉。「今回のドルの値上がりは機関投資家のまとまったドル買いにより……」といった話題がよく出ますが、実際にどのようなもので、どのような特徴があるのでしょうか? 詳しくご紹介します。

資金を集めて運用する企業・団体

機関投資家は、「投資家」という呼び方をしますが、実は企業や団体であることは就活生ならご存じの方も多いでしょう。個人投資家が、個人の資金で株式の売買などを行うのに対し、機関投資家は多くの人たちからお金を集めて運用しています。一般的には、以下のような企業や団体を指します。

●生命保険会社
●損害保険会社
●年金基金
●投資信託会社
●投資顧問会社

生命保険会社や損害保険会社では、保険加入者の保険を運用資産の元手にしています。ほかに、共済組合や農業協同組合なども、加入者(組合員)から集めたお金を元手に投資しています。

年金基金の場合は、年金加入者の保険料が元手になっています。日本の機関投資家の中でも、特に有名なGPIF(Government Pension Investment Fund)は、日本語名を「年金積立金管理運用独立行政法人」といい、年金基金を原資にしている厚生労働省管轄の団体です。134兆7,475億円(平成27年度末現在)もの資産を持ち、世界的にもトップクラスの規模を誇っています。

投資信託会社は、不特定多数の個人投資家などから集めた資金をまとめて投資を行う企業です。証券会社や銀行で販売している投資信託商品(ファンド)をつくり運用しています。「大和証券投資信託委託」や「みずほ投信投資顧問」などの会社が有名です。

投資顧問会社は、株式投資について投資家に助言する会社のことですが、投資家からの委託で資金を集め実際の運用も行います。長期で安定した運用を得意とするところから短期で大きな利益を狙うところまで、企業により運用スタイルは様々です。

運用方法の違い

一口に機関投資家といっても、資金の運用スタイルには様々な違いがあります。例えば、保険会社や年金基金などは一般的に安定的で長期の投資をメインとすることが多いと言えます。そのため、国債や債権などへの投資比率が比較的多い傾向にあります。

一方、投資顧問会社の中には、株式の短期的な売買を繰り返すヘッジファンドなどで、高い収益を狙う運用を行う企業もあります。このようなハイリスク・ハイリターンの運用方法は、時に市場の相場を大きく左右するケースも見られます。

影響が大きい海外投資家

日本市場へ大きな影響力を持っているのは、実は海外の投資家です。売買全体の6割以上を占めているといわれます。中でも、海外の機関投資家は規模も大きく、運用スタイルも以下のようにさまざまなタイプがあります。

1.ヘッジファンド

先程も説明したヘッジファンドですが、海外の場合は資金力がかなり大きく市場の影響力も絶大です。ハンガリーのソロス・ファンド・マネジメントなどが有名です。

2.政府系ファンド

各国政府が自国の資金運用として設立した投資ファンドです。石油や天然ガスなど豊富な天然資源を持つ国が多く、資源による収入や貿易黒字による外貨準備金などを原資に、次世代に向けた蓄えや財政赤字の穴埋めなどの目的で行います。ノルウェー政府年金基金やアブダビ投資庁、CIC(中国投資有限責任公司)などが有名です。日本には現在なく、設立には賛否両論があります。

3.ファンド

海外資本の投資信託会社も、日本市場で大きな売買を行っています。ヘッジファンドと違い、こちらは中長期の取引を主に行うケースが多いのが特徴です。アメリカのJPモルガン・アセット・マネジメント、イギリスに本拠地を置くフィデリティ証券などがあります。

4.年金基金

海外の年金機構も大きな投資を行う団体のひとつです。年金運用が目的ですので、運用スタイルは超長期投資が基本です。投資した企業の経営に株主提案をする「モノ言う」株主として有名なカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などが有名です。

コンピュータを駆使した高性能取引

海外の機関投資家が行うヘッジファンドでは、最近コンピュータを駆使して従来できなかった超短期的取引を行う運用スタイルをとるところが増えています。

どのような運用をするのか、幾つか例をあげてみましょう。

まずCTA。コモディティ・トレーディング・アドバイザー(Commodity Trading Advisor)の略で、先物取引を中心とした運用スタイルです。金融工学を駆使したプログラムにより、コンピュータが24時間365日休まずに自動売買する戦略をとります。

HFTはハイ・フリークエンシー・トレーディング(High frequency trading)の略で、高頻度取引などと呼ばれています。こちらも高性能コンピュータを利用し、1,000分の1秒単位で売買注文を繰り返す運用スタイルです。短期間での狭い利ざやを根こそぎ取ることで利益を得るという、全く新しい手法です。

これらのうち、特にHFTは利益を得やすい反面、個人投資家の機会を奪うということで賛否両論になっています。いずれにしろコンピュータを使った取引が、ヘッジファンドにおける最近のトレンドだといえます。


大学も投資家?

意外と知られていない海外の機関投資家が他にもあります。そのひとつが、大学が投資を行うエンダウメント(Endowment)です。

大学財団や大学基金とも呼ばれるエンダウメントは、元々の語源が「非営利団体の業務運営のために寄附金で設立された財団」を意味し、発祥は紀元176年のローマ。その流れをくみ、寄附金の運用を積極的に行っているのがアメリカの大学で、中でも双璧は超名門校のハーバード大学やイェール大学です。

2013年(平成25年)度の実績では、2大学の資金規模はハーバード大学が3兆8,800億円、イェール大学が2兆4,936億円です。日本の大学でも、大学基金を設立していますが、規模はかなり違います。同じく2013年度実績で、トップの慶應義塾大学が481億円。2位の早稲田大学が274億円です(いずれも第3号寄附金)。アメリカの大学がいかに突出しているかが分かるでしょう。

エンダウメントの強みは寄付金が原資であること。一般の機関投資家が運用する銀行預金や保険金、年金などはいずれ返金する必要があります。ところが、寄付金は返済義務がない純粋な自己資金のため、半永久的に運用が続けられるのです。つまり、自己資金を長期運用し、利益を継続的に出すのがエンダウメントの特徴だといえます。

まとめ

このように、機関投資家にはさまざまなタイプがあります。特に、金融業界を目指す方には、前述の通り、日本市場に大きな影響を与える海外の機関投資家は要注目です。コンピュータを駆使した新しい運用スタイルの登場など、最新のトレンドも含め、今後も気に留めておくことをお勧めします。


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