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注目記事2024.03.01

「預金」と「貯金」と「貯蓄」。いったい何が違うの?

旅行に行くためにとか、結婚式の準備、車や家の購入のためになど、将来やりたいことや購入したいもののために必要なお金を“ためること”を、一般的には貯金と言いますよね。でも、銀行に預ける場合は「預金」と言うし、郵便局の窓口などでゆうちょ銀行に預ける場合は「貯金」と言います。さらに似たような言葉に「貯蓄」もあります。いったいこれらの言葉は何が違うのでしょうか。就活生なら知っておくべきお金にまつわる基礎知識として、ご紹介しましょう。

預ける金融機関で変わる

「預金」と「貯金」の違いは、ずばり「お金を預ける金融機関の違い」です。大まかに区分すると以下のようになります。

1.「預金」と呼ぶ金融機関:銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫など

2.「貯金」と呼ぶ金融機関:ゆうちょ銀行、JAバンク(農業協同組合)、JFマリンバンク(漁業協同組合)など

1.では、いつでも引き出せる普通預金も、一定期間を決めて預ける定期預金も「預金」です。2.では、銀行の普通預金にあたるのが普通貯金、定期預金にあたるのが定期貯金になります。「ゆうちょ銀行も銀行なのになぜ?」と思われる方もいると思いますが、これは民営化される前の郵便局時代の呼称が今でも続いているためです。

郵便貯金は庶民が対象

では、なぜ取り扱う金融機関で呼び方が違うのでしょうか? これは、銀行預金と郵便貯金では、成立したときの歴史的な背景がそれぞれ違うためです。

まずは郵便貯金から。郵便貯金は、国の政策として明治8年から始まりました。それまでの日本では、「いざというときのためにお金を貯める」=「貯金」という習慣があまりありませんでした。そもそも江戸時代までは、多くの人が農業を営み自給自足に近い生活を送っていたため、お金そのものが今ほど使われていなかったからです。したがって、その流れを引き継いだ明治初期でも、国民全体はまだ貧しいままだったのです。

そこで、庶民に「お金を貯めること」を奨励しようと、イギリスの郵便制度を参考にして当時の大蔵省(現・財務省)が運用を始めたのが郵便貯金です。一人ひとりの貯蓄額はわずかでも、それらを集めることで国家の発展のために活用しよう、という目的もありました。お金を預けたのは、主に貧しい農民が多かったようです。

企業や商人向けだった銀行預金

対する銀行が日本で初めて設立されたのは、明治6年です。最初はすべての銀行が国立で、当時100を超える銀行がすでにあったようです。明治15年に中央銀行として日本銀行ができた後は、ほかの銀行は民間に変わっていきました。

当時、銀行にお金を預けたのは、都市部の商人や企業などが主でした。これは、預けられる最低金額が1口5円(現在の20万円~30万円程度)以上などと決まっていて、庶民の多くは利用したくてもできなかったためです。当時は、小学校の教員や警察官の初任給が現在の物価換算で月8万円~9万円だった時代です。また、当時から「預金」は企業などに融資という形で貸し出されていました。

ちなみに、「預金」と「貯金」では、金融機関が倒産や破綻した場合に、預けたお金を保護する制度も異なります。

預かったお金を「預金」と呼ぶ銀行や信用金庫などが倒産した場合は、預金保険制度が適用されます。JAバンクなど預かったお金を「貯金」と呼ぶ金融機関では、貯金保険制度が適用されます。

ただし、保護される内容は同じで、いずれも一人あたり1つの金融機関につき元本1,000万円までです。ゆうちょ銀行も預かったお金を「貯金」と呼びますが、適用されるのは預金保険制度です。これは、預かったお金の商品名が「貯金」というだけで、民営化により実質的には「預金」と同じになったからです。

お金を増やすなら貯蓄を

さて「預金」と「貯金」の違いに加え、もう一つの「貯蓄」の違いとは何でしょうか。これは、漢字をよく見ると違いが浮かび上がってきます。「預金」は“預ける”、「貯金」は“貯める”に対して、「貯蓄」は“蓄える”。つまり、貯めるより、さらに積極的にお金を増やして活用していくニュアンスがあります。

金融の世界では単にお金を大切に貯めるだけでなく、さらにお金を増やすための資産運用のことを「貯蓄」と言い、株式や債券などの金融資産そのものも意味します。

いわゆるタンス預金に代表されるように、お金をただ手元に置いておくだけでは増えません。子どもの貯金箱も同じこと。いかに増やすかを考えて、初めて「貯蓄」と呼べるのです。

実は2023年の秋頃から、タンス預金が減少傾向になったことがわかっています。物価上昇に伴って自宅に置いていた現金に手をつける人が増えたこと、2024年7月の新札への切り替えを前に運用を考えるようになった人がいることなどが、その背景として推察されます。

貯金や預金から貯蓄へという動きが加速しそうです。

ただ、ここで忘れてならないのは、株式や不動産のように貯蓄には元本割れのリスクがあるということです。大きく増やすことも可能ですが、その逆もあり得るわけです。

では、預金や貯金ならば安心かというと、タンス預金なら盗難の心配があるし、銀行に預ける預金も、物価上昇に利息が追いつかないリスクがあります。

大切なのは、預金と貯金、貯蓄、それぞれのメリット、デメリットを理解した上で、適切な組み合わせを考えることでしょう。

まとめ

貯蓄に使われる「蓄」という漢字は、お金だけでなく、「知識を蓄える」「災害に備えて食料を蓄える」という具合に、他の対象にも使われます。これもユニークな点ですね。「預金」と「貯金」と「貯蓄」。普段何げなく使っている言葉ですが、ぜひ適切に使い分けたいものです。