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「格付け会社」ってなに?

英国のEU離脱のニュースが世間を騒がせ続けています。それを受けて「イギリス国債の『格付け』が下がった」ことも大きなトピックとなっています。さて、その「格付け」とはなんでしょうか? そして誰が付けるものなのか。今回は格付けと格付け会社について解説します。

格付けってなに?

「格付け(債券格付け)」というのは、政府や企業、金融商品などの信用状態に対して付けられる等級のことです。ざっくばらんにいえば、国債や社債など、彼らの「借金」について「貸したお金がちゃんと返ってくる度」を記号でレーティングしたものです。つまり、債権の元本・利息が確実に払えそうな国や企業は格付けが上がり、返済能力がなさそうなら下がります。

格付けを行うのは、「格付け機関」と呼ばれる格付け会社(レーティング・ファーム:rating firm)です。これは公的な機関ではなく、専門の民間企業です。彼らが行う格付けには、債券の発行体となる企業などからの依頼によって格付けをする「依頼格付け」と、市場のニーズによって格付け機関が独自に格付けをする「勝手格付け」があります。

格付けは格付け機関のアナリストたちによる財務分析や業界分析を基にして行います。また、依頼格付けの場合は格付け対象企業の経営陣とのミーティングなども行い、より詳細な情報を基に格付けを行います。

格付けは何のために必要なのでしょうか? 答えは「投資家の判断材料」のため。もちろん国や企業、市場に流通した債券については、たくさんの情報が開示されています。しかし、それらをすべて把握し、分析するのは大変なこと。

そこで複数の専門家がそれらを評価した「格付け」があれば、判断がしやすくなるというわけです。普段の買い物のときに、企業の広告だけではなく、専門家によるランキングやレビューを参考にすることと同じです。

日本国内の格付け会社はどこ?

格付け会社は複数存在します。日本では、金融庁の登録を受けた「信用格付業者」と呼ばれる企業が7社あります(金融庁 信用格付業者登録一覧/2012年1月31日現在 )。

■国内の格付け会社

株式会社日本格付研究所(JCR)

国内で高いカバー率を誇る大手機関。日系では唯一、世界の開発銀行5行の格付けを行ってもいます。国内・海外大手の中で、一番高い格付けをする傾向があるといわれています。


株式会社格付投資情報センター(R&I)

日本経済新聞社の社内で発足した「公社債研究会」に端を発する機関。現在は日経の連結子会社かつ特定子会社になっています。

■海外の代表的な格付け会社


S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)

アメリカの2大格付け会社の1つ。もっとも厳しい格付けをする傾向があるといわれています。株式指数である「S&P 500」を発表している機関です。日本では「スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン」と「日本スタンダード&プアーズ株式会社」が共同して国内の企業や債券の格付けを行っています。


Moody's Corporation(ムーディーズ)

こちらも米大手トップ2の1社。日本が発行体の債券についても、戦前から調査・評価を行ってきた歴史を持っています。現在、国内の信用格付業者では「ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)」と「ムーディーズSFジャパン株式会社(Moody's)」の2社が登録されています。


Fitch Ratings Ltd.(フィッチ)

ロンドンとニューヨークに本拠地のある格付け会社。上記2社に続く、世界3番手の機関(イギリスの会社と米国の会社が合併してできた機関であることから)。日本では登録を受けた「フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社」があります。


それぞれの「格付け会社」は何が違うの?

では、それぞれの企業で何が違うのか解説していきましょう。

まず簡単なところでは、格付けに使われる記号が違います。大まかにいえば、どの企業もABCDのランクを付けていて、AからBの上位あたりまでが「投資適格」、Bの下のほうとC・Dは「投機的」とみなされます。ただ、同じAの中にもランクがあり、その表し方が異なります。例えば、Aの3番目はムーディーズなら「AA」、S&Pなら「Aa2」という具合です。

また、「国内の格付け会社」か「海外の格付け会社」という大きな違いもあります。国内の格付け会社は、主に日本の企業や、海外の金融機関の日本支社、国内の債券などを評価しています。日本の事情に精通しているので、国内企業の分析は「得意」であるといえます。また海外の格付け会社がフォローしていない中小企業の格付けもしています。

Moody's(ムーディーズ)、S&P(スタンダード&プアーズ)、Fitch(フィッチ)などに代表される海外の格付け会社は、よりグローバルに格付けを広げています。これらの機関の格付けは、日本国や国内企業については、国内の格付け機関より辛い点をつける傾向があります。

これは見方が厳しいという部分が1つ。そして、グローバルな格付けをしているので母数が大きく、そこには優良な企業なども多く含まれるということもあります。また、記号は似通っていても、基準は機関によってそれぞれなので、一概に「厳しい」とだけいえるものではない部分もあります。

格付けは「いい国・いい会社かどうか」のランキングではない

注意しなければいけないのは、格付けはあくまで「信用リスク」に対する評価であるということです。「経営が面白い」とか「将来が楽しみ」「国民が幸せそう」などのこととは関わりなく「確実にお金を返せるかどうか」だけを表し、必ずしも国や企業の総合的な評価とリンクするわけではありません。

また「絶対的な評価」ではない、ということにも注意が必要です。あくまで民間企業のアナリストの意見ですから、それぞれの機関で評価がばらつくこともありますし、また予測が外れることもあります。

例えば世界に金融危機を起こしたサブプライム問題では、証券化されたサブプライムローンに高い評価を与えていたことが、事態を悪化させた原因の1つともいわれています。サブプライムローンが焦げつき始めると、高い評価をしていたはずの格付け機関は一転直下、格付けを大幅に下げました。

「格付け」は、専門家の目を借りることのできる便利なものではありますが、やはり人間の付けるものですから、盲信するのではなく、あくまで「誰かの意見」として参考にするのが良いのではないでしょうか。

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