公的金融機関の存在意義や役割ってなに?
パート③公的金融機関と混同されがちな機関

公的金融機関の定義には含まれませんが、その役割や社会的な存在意義が公共的であるため、公的金融機関と混同されがちな金融機関があります。例えば、公的金融機関同様に社会・経済の発展のために事業を実施する目的でつくられる独立行政法人や、特定の法律に基いて設立され、かつ設立に際して監督する行政官庁の認可を要する認可法人などがそれにあたります。また、株式会社ではあるものの、設立の背景となる法律や政策があり、国がその資本金の大半を出資している企業や、民間企業が共同出資し、官公庁の認可や指定を受け、中立性を求められる役割をもった企業などがあります。
認可法人など
預金保険機構(略称:DIC、預保)
国内唯一の「破綻処理機関」
「預金保険法」に基づく認可法人で、政府と日本銀行と民間金融機関全体 がほぼ同じ割合で出資。万が一、銀行などの金融機関が倒産などをした場合に、預金者を保護してくれる国内唯一の「破綻処理機関」です。具体的にはペイオフ制度の運営がこれにあたり、金融機関が破綻したときに、預金者1人あたり元金1,000万円までとその利息を預金保険機構が保証してくれます。また、不良債権買い取りや責任追及業務なども行っています。
農水産業協同組合貯金保険機構(略称:貯金保険機構)
農協・漁協組合員のためのセーフティーネット
1973年設立の認可法人で、農水産業協同組合(農協・漁協)の貯金保険制度を運営し、同制度の貯金者を保護する機関です。農協・漁協が破綻した場合の貯金者に対する保険金の支払い、貯金など債権の買い取り制度により、貯金者を保護することを狙いとしています。銀行を含む、一般金融機関の貯金者の保護は預金保険機構の担当となりますが、農協・漁協は経済、共済事業なども兼ねている総合事業体であることから、預金保険機構とは別に設立されました。

民間企業
日本取引所グループ(略称:JPX)
金融商品市場のインフラを整える取引所
現物株式の取引で圧倒的シェアをもつ東京証券取引所グループとデリバティブ取引に強みをもつ大阪証券取引所が、2013年に経営統合。主に、株式をはじめとした金融商品を取引するための市場を開設・運営することで、経済社会における重要なインフラを整えています。マーケット運営や取引を適切に行ってもらうためのルールづくりや、利便性の高い取引所システムの企画・開発など多岐にわたる業務を行っています。
ゆうちょ銀行(略称:ゆうちょ、JP)
世界最大規模の預金取扱金融機関
2006年、準備会社「株式会社ゆうちょ」として設立され、翌年の日本郵政公社の民営・分社化に伴って現名称に変更、日本郵政公社から主に郵便貯金事業などを引き継ぎました。総資産208兆1,490億円、貯金残高178兆4,063億円(2015年12月末現在)で、預金取扱金融機関としては世界最大規模。2015年11月、日本郵政、かんぽ生命と同時に東京証券取引所に上場した、日本郵政グループに属する金融機関です。
日本証券金融株式会社(略称:日証金、JSF)
証券会社に融資・貸株を行う金融機関
日本証券金融と大阪証券金融が2013年に合併し、新たに日本証券金融株式会社として発足。主に、証券会社・金融機関を対象に、資金や株式・債券を調達して貸し付けを行っています。直接金融の舞台である「証券市場」を支え、証券会社や投資家の活動をバックアップ。株券や資金を供給することで、より多くの投資家がマーケットに参加できるようサポートしています。「日証金」の名で親しまれ、マーケット・インフラとして公共的役割を担っています。
東京中小企業投資育成株式会社(略称:SBIC、投資育成会社)
中小企業への出資を行う民間企業
1963年に設立され、18都道県の地方公共団体、商工会議所、金融機関などを株主としています。営業対象エリアは、静岡、長野、新潟以東の18都道県が中心となり、愛知・岐阜・三重・石川・富山の5県は名古屋中小企業投資育成が、福井、滋賀、奈良、和歌山以西の 24府県は大阪中小企業投資育成と、それぞれ姉妹会社が担当しています。地方公共団体からの出資を受け、中小企業への投資を行っていますが、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの公的機関とは異なり、民間企業の1社です。
証券保管振替機構
債券や株式などの証券の株式等振替制度を運営する、日本で唯一の振替機関
1984年に前身となる「財団法人証券保管振替機構」として設立、2002年に財団から保管振替事業の全てを譲受したことよって株式会社として設立されました。上場会社から株式の預託を受け、保管、株式などの証券が売買されると、証券および資金の受渡(決済)をする保管振替事業を行っています。現物をやり取りすることなく、管理上の記帳変更で取引決済を行うことで、迅速かつ大量の取引を可能にし市場の活性化を進める重要なインフラとなっています。
産業革新機構
官民共同出資のベンチャーキャピタル
先端技術や特許の事業化を支援することなどを目的として、2009年設立。平成26年3月時点で、政府が約2,860億円、民間企業十数社が合計で140億円ほどを出資しており、資本金は約3,000億円、さらに政府保証枠として1兆8,000億円がつけられ、総額2兆円以上の投資が可能な超巨大ファンドとなっています。ソニー、東芝、日立製作所の中小型ディスプレイ事業を統合、株式会社ジャパンディスプレイとして再編したようなPE(プライベートエクイティ)業務と新規事業に対する投資を行うVC(ベンチャーキャピタル)業務を行っています。
地域経済活性化支援機構
地域経済の活性化や企業再生を目的とした官民ファンド
2009年に、有用な経営資源を有しながら債務を負っている事業者の事業再生を目的とする国の認可法人・企業再生支援機構として設立。主な実績として、日本航空破綻時の支援、再上場などを経て、2013年地域経済活性化支援機構として改組。従来の事業再生の役割に加え、地域の経済成長を牽引する事業者の支援を目的とするファンドを金融機関などと共同して設立・運営するなど、地域経済活性化も担います。
海外需要開拓支援機構
日本の商品・サービスの海外需要開拓のための官民ファンド
2009年に、有用な経営資源を有しながら債務を負っている事業者の事業再生を目的とする国の認可法人・企業再生支援機構として設立。主な実績として、日本航空破綻時の支援、再上場などを経て、2013年地域経済活性化支援機構として改組。従来の事業再生の役割に加え、地域の経済成長を牽引する事業者の支援を目的とするファンドを金融機関などと共同して設立・運営するなど、地域経済活性化も担います。
日本格付研究所/格付投資情報センター/ムーディーズ・ジャパン/ムーディーズSFジャパン スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン/日本スタンダード&プアーズ/フィッチ・レーティングス・ジャパン
金融庁の指定を受けた、信用格付業者
格付会社は金融商品や企業、政府などの信用状態に関する評価を「AAA」や「Ba1」といったようにアルファベットや数字を用いた等級で行う株式会社で、その中でも金融庁に登録、指定を受けた格付会社を信用格付業者と呼びます。信用格付業者として登録されている会社は現在日本国内に7社あり、そのうち、日系企業なのが株式会社日本格付研究所と株式会社格付投資情報センターの2社。その他5社はすべて外資系で、ムーディーズ系2社、スタンダード&プアーズ系2社、および、フィッチ・レーティングス・ジャパンとなっています。