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注目記事2016.06.01

日本に“投資銀行”はいくつあるの?

日本にも“投資銀行”はたくさんある

“投資銀行”と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど、外資系の金融機関かもしれません。たしかに日本には、アメリカやヨーロッパの投資銀行がたくさん進出しており、投資銀行業務を展開しています。

では、日本国内には、“投資銀行”と呼べる企業はないのでしょうか。いいえ、まったくそんなことはありません。日本でも、投資銀行業務を積極的に展開している会社はたくさんあります。投資銀行業務のレベルの高さで世界に知られる会社もあります。

実は多くの証券会社、銀行がそうです。証券会社や銀行には、事業の1つとして投資銀行業務を行っている会社が少なくありません。しかし、必ずしも専業ではないため、そのイメージを多くの人が持っていないだけなのです。最近では、投資銀行の専門分野にフォーカスして業績を上げている企業も登場し始めています。

銀行とついているが、銀行ではない

“投資銀行”は、銀行とついてはいますが、一般的なイメージの銀行ではありません。分かりやすくいえば、預金を集めたり、個人や企業向けに貸し出しや融資をしたり、といった業務はしません。どちらかというと証券会社に近いのですが、個人向けの株式の売買や投資信託の販売なども行いません。

投資銀行業務は、主として法人に向けた専門的な金融サービスです。たとえば、会社が設備投資のための資金を必要としたとき、そのための環境をつくる。証券を発行し、一時的にそれをすべて買い取り、投資家に販売していくのも、そのひとつです。投資家はしかるべき期日になれば、利回りが受け取れる仕組み。投資銀行の存在によって、会社は証券を発行することで、資金が調達できるようになります。

これを「引受業務」と呼びますが、買い取った証券に最適な値付けをし、上手に販売していくためには、知識や技術、ノウハウが必要となります。それを有しているのが、“投資銀行”なのです。日本の証券会社や銀行にも、この業務を展開しているところがたくさんあります。

多岐にわたる法人向け金融サービス

“投資銀行”といえば、かつてはこの引受業務が主力事業のイメージでしたが、世界的な金融自由化や経済のボーダーレス化が進んでいくなかで、その業務の幅は大きく広がっていきました。

現在では、債券市場、株式市場での資金調達や株式公開支援業務、引受業務に加え、M&Aと呼ばれる企業の買収・合併・事業譲渡などの仲介やアドバイザリー業務、不動産投資や不動産証券化業務、事業再生支援業務など、多岐にわたっています。

企業の財務的なアドバイザリー全般を担う役割をしたり、自社内で株式や債券の取引をして収益を目指したり、産業・企業の調査分析業務なども行われています。

たとえば、ベンチャー企業が株式を上場するときには、必ずお世話になるのが、“投資銀行”です。このときは、日本の証券会社や銀行が“投資銀行”として大きく関わっていることも少なくありません。

M&A関連分野で専門特化企業も

日本における“投資銀行”、正確にいえば投資銀行業務を手がける企業群の例を下記に掲げてみました。大手証券会社、大手銀行など、たくさんの“投資銀行”が日本にもあることを知っていただければと思います。そしてこれらはほんの一部。

ほかにも、投資銀行業務を展開している企業はたくさんあります。いわゆるコンサルティング会社のなかにも、金融機能や投資機能を持って、企業にさまざまな支援を行う投資銀行業務を展開しているところもあります。民間企業ほどの成長志向を持つことはない政府系金融機関にも、「日本政策投資銀行」という投資銀行的な機能を持つところがあります。

また近年では、先にも書いたように専業で専門分野にフォーカスした事業を積極的に展開する“投資銀行”も増えてきています。特に、大きな注目を浴びているのが、M&Aの関連分野です。

日本国内ではM&A市場が活発になってきていますが、企業そのものの買収や売却のみならず、不採算部門や本業ではない事業部門を切り離したり、統合させていくといった動きも見られます。また、資金力を使って海外の有力企業を買収する動きも加速しています。そこで、国内で投資銀行業務を手がける証券会社や銀行、外資系金融に加えて登場してきたのが、M&Aに特化した独立系の“投資銀行”なのです。

●代表的な国内の投資銀行

○証券系
野村證券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券

○銀行系
三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行

○政府系
日本政策投資銀行

○独立系
日本M&Aセンター、GCAサヴィアングループ、マーバルパートナーズ

行き過ぎた利益追求の姿勢を見直し

“投資銀行”の世界では、高い金融スキルを持っているがゆえにリスクの高い事業案件や投資に数多く取り組むことになり、行き過ぎた結果としてリーマン・ショックのような事態が引き起こされてきたのも事実です。

また、長期的な視点に立った企業支援ではなく、とにかく短期的な利ざや(※1)だけを追求するような金融企業もありますが、そういったところと“投資銀行”は一線を画しています。いわゆる“ハゲタカ”といわれるような投資会社は、“投資銀行”とは呼ばれません。

世界に大きな衝撃をもたらすことになったリーマン・ショックの反省から、現在は行き過ぎた利益追求の姿勢を見直し、リスク管理をより強化している“投資銀行”が少なくありません。

もちろん企業ですから、利益は追求されます。大きな利益が期待できる事業であることも、多くの人を“投資銀行”の世界にひきつけている理由でもあります。

※1 借りたお金の金利よりも高い金利で貸し出した場合に得ることのできる利益のこと。

まとめ

“投資銀行”は日本国内にもたくさんあって、投資銀行業務を経験できる機会はとても多い、ということをご理解いただけたと思います。“投資銀行”に興味のある方は、ぜひ広い視野で企業群を眺めてください。

実際、銀行や証券会社では、投資銀行業務をこれまで以上に強化していく動きが見られます。いわゆる一般の銀行業務や証券業務ではなく、投資銀行業務にフォーカスして企業研究をしたり、志望動機につなげていくことは、採用活動におけるアピールのひとつになるかもしれません。

金融の世界のなかでも、プロフェッショナルとしての高度なスキルが求められるのが、“投資銀行”。それだけに仕事には厳しさもあり、覚悟も求められますが、スペシャリストを目指したい人は要注目の分野です。