実践編vol.3:自己紹介と自己PR。その違いとは?
今回は、面接でよく出る質問で3番目に多い「自己紹介・自己PR」について説明します。これは面接の最初の質問になることが多く、自分のことを説明する最初のチャンス。この回答の成否が、その後に続く質問に影響を与えることも多いので、注意が必要です。
自己紹介は面接担当者に質問のネタを渡すもの
多くの面接は「まずは簡単に自己紹介をお願いします」から始まります。この自己紹介の内容によって、その後の面接がスムーズに進むかどうかが決まってきます。それはなぜなのか? 面接担当者は自己紹介の内容を聞いて次のことを知ろうとしています。
- どんな学生なのか
- どんな学生生活を送ってきたのか
- 回答を丸暗記しているだけかどうか
- 自分の伝えたいことをうまく話せるかどうか
これだけの情報を期待しているにもかかわらず、学校名と名前だけを言って終わってしまう学生もいます。「本番前に面接の練習すらしてこない学生は、仕事でも学ぼうとする意欲が低いはず」(企業の面接担当者)と思われてしまうでしょう。所属と名前だけで終えてしまう「自己紹介」は論外にしても、アルバイトやサークルの話だけで終わってもダメ。自己紹介は、面接担当者に会話・質問の糸口となる「ネタを渡す」といった気持ちで話してください。自分のこと全体を分かってもらうための肩慣らしのようなものと考えることです。


自己紹介で最低限話すこと
具体的には次のようなことを話してください。「学生生活でどんなこと(学業、サークル・部活動、アルバイト)をして来たのか」「どんなことに興味を持っているのか」「何が得意なのか」「強みは何か」などです。 面接担当者はエントリーシート・履歴書、適性検査の結果などの文字情報でしか、あなたに関する情報を入手していません。しかも、すべての面接担当者がエントリーシート・履歴書を読み込んで面接をしているわけではありません。面接の場が就活生の情報に触れる初めての機会かも知れないので、学生生活全体を通してその人らしさが分かる話をすることです。ただし、短所を含めて自分のことを洗いざらい話す必要はなく、あくまでも自分の良さを伝える内容にしてください。
時間に合わせて複数パターンを用意
自己紹介は「1分で自己紹介を」とか「2分でお願いします」などと、時間などを指定されることもあります。自分のことを印象付けられることから先に話すようにし、1分パターン、2分パターン、3分パターンと、時間ごとに何を話すのか準備をしておいた方がいいでしょう。また、「一言で」といわれた場合には、長すぎないように「○○大学の△△です。(大学では○○に力を入れてきました。)本日はよろしくお願いします」ぐらいになります。( )の部分には、大学生活での活動(研究や部活など)や会社選びの基準、意気込みなどでいいでしょう。


自己PRは質問のタイミングで話す内容を変える
一般的には、自己紹介は学生生活全般や現在の自分を紹介するもので、自己PRは過去の経験を通して自分の強みを紹介するものです。ただし、自己紹介が面接の冒頭にだけ質問されるのに対し、自己PRは面接の冒頭の時もあれば面接の途中で質問されることもあります。そのため、質問されるタイミングによって、その内容を変える必要があります。
面接の途中で質問された場合は以下のような内容になります。
- 自分の強みは何か
- その強みはどんな経験で培われたのか
- それをどう生かしているのか、または仕事で生かしたいのか
自己紹介と同じように面接の冒頭に「自己PR」を求められた場合には、前半で自己紹介的な内容を話し、後半で強みと裏付けの経験を話すといいでしょう。面接の冒頭に自己PRの内容だけで終わってしまうと、強みを生かした経験、例えばアルバイトやサークルの話だけで終わることになってしまいます。そうなると、面接担当者も十分な質問のネタを得られず、その語の面接をスムーズに進められないでしょう。
無理に受けを狙わない
最後に注意したいのは、受けを狙ったり、「私は○○のような人間です」みたいなことを無理に言う必要はありません。「私は納豆のような人間です(=粘り強い)」とか「私はスポンジのような人間です(=物事を吸収する)」のような、使い古されている比喩表現を使わないことです。面接担当者はそんな表現を聞いた瞬間に「マニュアル本のマネか!」と思ってしまいます。自己紹介は学生生活の経験全般を話すことであって、自己PRは強みを説明するものです。 (日経カレッジカフェ副編集長 渡辺茂晃)

<プロフィール>渡辺茂晃(わたなべ・しげあき)
日経カレッジカフェ副編集長。1991年日経事業出版入社。雑誌編集、日本経済新聞社産業部記者を経て98年より就職情報誌、書籍の編集に携わる。2005年より日経就職ナビ編集長。2014年10月から日本経済新聞社人材・教育事業局。桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科非常勤講師。著書は『これまでの面接VSコンピテンシー面接』『面接の質問「でた順」50』等がある。
日経カレッジカフェ(http://college.nikkei.co.jp/)