金融を目指すすべての学生へ キャリタスファイナンス 金融ビジネスの価値・魅力が見つかる!就活生のためのサイト

金融ビジネスの価値・魅力が見つかる!就活生のためのサイト

協力:日本経済新聞 電子版

  • articles 注目記事
  • Column 識者によるコラム
  • Guide 就活ノウハウ
  • Feature 特集
  • Event イベント

プロの視点

真壁 昭夫信州大学経済学部教授

今注目のキーワードから読み解く!
今後の金融業界展望

<第2回>2016.06.08
中国が設立した国際金融機関「AIIB」とは?

AIIB(アジアインフラ投資銀行)は中国が設立した国際金融機関です。AIIBは2016年に業務を開始しました。主な業務は、アジア新興国などのインフラ開発のための融資を行うことです。中国はシルクロード経済圏構想(一帯一路)を通して、アジアから欧州までの広範な地域への影響力を強めることを目指しています。その中で、AIIBはアジア地域のインフラ開発を支援し、中国の存在感を高める目的で設立されました。こうした動きによって、中国の経済的な発言力は大きく増すと見られます。そのため、中国をめぐる動向は、今後の世界情勢にとって重要な要素になるはずです。

 

AIIBの目的

中国がAIIBを創設した背景には、中国経済が抱える過大な資材などの供給能力の問題があります。中国政府はその供給先として、新興国のインフラなどの需要を狙っているのです。
そこで中国 は、十分な投資資金を持っていない国に対してもAIIBから資金を提供することでインフラ投資を活性化し、中国から鉄鋼などの資材を買わせることを考えているのです。 リーマンショック後、中国政府は4兆元(当時の円換算額で60兆円程度)もの財政を出動し、急速にインフラ開発などを進めました。その結果、需要を大きく上割る鉄、石炭の生産設備が建設され、過剰な生産能力が生み出されました。
財政の出動は一時的に景気を支えます。政府が公共事業などを発注し企業や労働者にお金が回るからです。しかし、公共工事などが一巡すると、景気は徐々に下向きになります。過剰な生産能力の維持や在庫の管理に伴うコストの増加、不良債権の増加が企業、金融機関の経営を圧迫するからです。こうして中国経済の成長率は低下しています。そのため、中国国内に需要を大きく上回る供給能力が残ってしまいました。
この状況を克服するには、再度、景気刺激策が必要なはずです。しかし、過去の財政支出が過剰な生産能力という後遺症を残したため、中国は財政の出動に慎重です。そこで、中国はアジアのインフラ需要という海外経済の成長を取り込み、景気を支えようとしています。

AIIBをめぐる世界各国の動き

AIIB創設には、中国のしたたかな考えがあります。中国は多くの国に参加を呼びかけ、国際社会の理解を得ることで体裁を整えようとしています。中国には、IMF(国際通貨基金)やADB(アジア開発銀行)などの国際金融機関を運営するノウハウがありません。そこで、多くの国にAIIB参加を呼びかけ、より大きな資金を確保すると同時に、組織運営などに関するノウハウの欠落を補おうとしているのです。
中国はアジアだけでなく、世界の市場への影響力の増大を狙っています。海路と陸路を通して中国から欧州までに至る広範な地域に経済協力を働きかけています。それがシルクロード経済圏構想(一帯一路)です。つまり、AIIBは中国が目指すアジアのシルクロード経済圏構想(一帯一路)を支える重要なパーツの一つです。これによって、米国の権力を軸に調整がなされてきたこれまでの国際社会の在り方に大きな変化をもたらすことが考えられます。
第2次世界大戦後、世界は米国の政治、経済、軍事力に支えられてきました。米国が世界の利害を調整することで復興と成長が進みました。それに対して中国は、一帯一路の方針を推し進めることで、米国と互角に張り合う新たなリーダーを目指していると言えます。 こうした中国の考えは、世界情勢の中で大きな動きを鮮明化しました。まず中国への接近と警戒です。2015年3月、米国の同盟国である英国が、何の前触れもなくAIIBへの参加を表明しました。これは、米国の影響力が低下し、中国の存在が大きくなっていることを国際社会に突きつけました。英国の行動は、主要先進国陣営に雪崩現象というべき動きをもたらしました。ドイツ、イタリア、フランスという旧西側の主要国が相次いでAIIB参加を表明したのです。その後、英国、ドイツは、自国の経済を支えるために中国との関係を強化しています。そこには、世界最大の流通市場としての中国経済へのアクセスを確保し、低迷する経済を支えたいという考えがあります。

AIIBへの警戒、今後の展望

一方、わが国や米国はAIIBへの参加を見送っています。この判断は、AIIBの中国中心のガバナンスに十分な透明性が確保されていないとの判断によるものです。具体的には、AIIBの経営が中国の利益に振り回され、参加国の公平性が損なわれるのではないかとの懸念です。  2016年5月までの動きを見る限り、AIIBの運営は前途多難です。AIIB自身の信用力にやや懸念があり、自力での資金調達がままならない面があります。そのため、現在のAIIBは国際金融機関としての経営基盤を十分に備えているとはいえないかもしれません。
これまでのAIIBにまだ本格的な動きが見られないことなどから、参加を見送ったわが国の判断は適切と考えます。今後も中国が自力での資金調達に窮するのであれば、わが国の存在の重要性、米国のリーダーシップの重要性を国際社会に示す良い機会になるかもしれません。それは、日米が共同で運営するADBの存在意義を引き上げるためにも重要です。
一方、米国の実力が低下していることで、米国や中国の力が拮抗する“多極化”が進みつつあることも確かです。英国は中国の原子力技術を受け入れ、ドイツはメルケル首相が積極的に訪中してトップセールスを展開するなど、中国の関係を強化する国も増えています。それは先進国、あるいはEUという従来の連携、共同体の考えではなく、自国の利害のみを重視しようとする動きが強まっていることを表しています。
こうした動きは金融業界にも大きな影響を与えます。中国が金融の自由化を進める中、人民元を用いた資金決済、対中投資の強化、そして、プロジェクトファイナンスの進行など、中国、アジアに関連する金融業界の取り組みは今後も進むでしょう。そうした動きに対応するために、語学や金融理論などのスキルはこれまで以上に必要性が高まると考えられます。

参考:AIIB参加国一覧

中華人民共和国 イギリス スリランカ ノルウェー
モンゴル フランス モルディブ マルタ
フィリピン ドイツ パキスタン アイスランド
ベトナム イタリア タジキスタン ポーランド
ラオス ルクセンブルク ウズベキスタン スウェーデン
カンボジア スイス カザフスタン アゼルバイジャン
タイ オーストリア キルギス 南アフリカ
ミャンマー ロシア オマーン トルコ
マレーシア ブラジル カタール ヨルダン
シンガポール オランダ クウェート ニュージーランド
ブルネイ グルジア アラブ首長国連邦 韓国
インドネシア デンマーク サウジアラビア オーストラリア
バングラデシュ エジプト イスラエル  
インド ポルトガル イラン  
ネパール スペイン フィンランド  

Columns
2016.11.24
真壁 昭夫 <第14回>フラジャイル・ファイブ

Columns
2016.11.09
真壁 昭夫 <第13回>フォワードガイダンス

Columns
2016.10.26
真壁 昭夫 <第12回>ボルカー・ルール

Columns
2016.10.12
真壁 昭夫 <第11回>TPP(環太平洋パートナーシップ協定)

Columns
2016.09.28
真壁 昭夫 <第10回>マイナス金利

Columns
2016.09.14
真壁 昭夫 <第9回>チャイナリスク

Columns
2016.08.31
真壁 昭夫 <第8回>欧州の金融緩和政策

Columns
2016.08.17
真壁 昭夫 <第7回>黒田バズーカ

Columns
2016.07.27
真壁 昭夫 <第6回>ヘリコプターマネー

Columns
2016.07.13
真壁 昭夫 <第5回>世界同時株安

Columns
2016.06.30
真壁 昭夫 <第4回>BREXIT(ブリクジット:英国のEU離脱)でどうなる? 世界経済の今後

Columns
2016.06.29
真壁 昭夫 <第3回>パナマ文書

Columns
2016.06.08
真壁 昭夫 <第2回>中国が設立した国際金融機関「AIIB」とは?

Columns
2016.06.01
真壁 昭夫 <第1回>今注目の新たなビジネス分野「FINTECH(フィンテック)」とは?

Articles
2016 to 2017
金融ビジネスに関わる企業のインターンシップ

Articles
2016.06.15
外資系金融で必要とされる英語力とは?

Articles
2016.08.03
先輩たちの就活を見る内定者アンケート

Profile

真壁 昭夫
Akio Makabe

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)に入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社へ出向。みずほ総研主席研究員などを経て、1999年より国内有名大学の講師・教授を歴任し、現職は信州大学経済学部教授。テレビ朝日「報道ステーション」、日経CNBC「NEWS ZONE」レギュラーコメンテーターなど多数のTV番組に出演する一方、ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」でのコラム連載、「下流にならない生き方」、「はじめての金融工学」など、著書も多数。