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[業界研究・企業研究] 採用コンサルタントが教える企業の新卒採用の裏側

採用コンサルタントが教える
企業の新卒採用の裏側 Vol.1

選考時の評価から
入社後の活躍まで決める
企業が「求める人財像」とは

業界研究・企業研究

小宮健実みなさん、こんにちは。 株式会社採用と育成研究社の代表をしております、小宮健実です。
これからこの連載を担当させていただきますので、よろしくお願いいたします。

自己紹介を兼ねて私の仕事を簡単に紹介しますと、人財の採用活動や育成活動の場面で企業を支援しています。採用活動の支援というのは、面接やグループワークの設計をすることです。どういう人を合格にするか決めたり、面接官をトレーニングしたりしています。ここでは紹介できませんが、誰もがよく知っている会社の選考も設計したりしています。

企業において、入社する人を選ぶという行為はますます重要性が増しています。とても専門性が高く、知識やスキルが求められます。一昔前のように、筆記テストをクリアして面接で会話が盛り上がれば合格という訳にはいきません。ましてや、想いが強ければ合格という訳にもいきません。

企業はどういう人が入社後に活躍し貢献してくれるか、真剣に分析して選考方法を設計しています。逆にいえば、企業がどのように採用活動を設計しているのか、その方法を知れば、皆さんが就職活動をする際にきっと役に立つでしょう。 実のところ、就職活動は一大イベント化し、情報も溢れ過ぎている感があります。多くの採用活動に携わった私から見ると質が高くない情報も多く、間違ったアプローチをしている人を見ることも少なくありません。
そのようなことにならないよう、ぜひこの連載を読み、正しい理解に基づいた適切な就職活動を行ってほしいと思います。

では早速始めていきましょう。

「求める人財像」の作成から採用活動が始まる

企業が採用活動を行う時、最初に作成するのが「求める人財像」です。
企業のホームページから採用情報を見ると、多くの企業が「求める人財像」を公開しています。「こういう人を求めています」という情報ですから、皆さんにとって大切な情報だと言えますね。

もしかしたら、どの企業も同じような、ありきたりのことが書いてあると感じる人もいるかもしれません。しかし「求める人財像」を作成することは、企業にとってとても重要で大変な作業なのです。
私もたくさんの企業の「求める人財像」を分析するお手伝いをしてきました。通常でも2カ月程度、長い場合には半年以上かかることもあります。そして、優良な企業ほど真剣に取り組んでいる傾向があります。
優良な企業は「企業の実態は人財であり、自社に合った人財を迎え、理想の人財像に向けて育てていく」という強い思いを持っています。ですから、採用活動に使用する「求める人財像」にこだわるのは当然だと言えます。

企業の「求める人財像」の作り方

では、企業がどのように「求める人財像」を作成しているかについて、少し具体的にお話ししましょう。下の図を見てください。

求める人財像の作成方法

企業によって作り方はさまざまですが、人事の採用チームが中心となり、現場のリーダーや経営陣に話を聞きながら作成する点については、多くの企業に共通しています。

例えばA社の「求める人財像」の作成では、コア・セッションと呼ばれる打ち合わせを重ね、完成までに2カ月を要しました。その時の作業の流れを簡単に説明します。

まずは現場の声を反映するために現場のリーダー(課長)へアンケートを実施しました。変化の速いビジネスの現場でどのような人財が求められているのかを知るためです。また、前年度に入社した新入社員について意見をもらうことも目的の一つでした。
次に社長や取締役に対しヒアリングを行いました。「今後はアジア地域に進出するので、グローバル志向の強い人財を採用したい」というように、経営陣からは今後の方向性を踏まえた近い将来の話を聞きます。

企業では、各事業部門にリーダーがいます。A社は中規模の企業でしたが、それでも意見を聞いた人は数十人になりました。当然、意見は一つではありません。人財を表現する言葉も様々です。
例えば「リーダーシップ」という言葉を使った場合、A社では、どのような場面でどのような行動が取れることを「リーダーシップ」と考えるのか、コア・セッションで討論し、共通理解をこつこつと蓄積していくのです。

他にも研修部門と打ち合わせを行い、最新の人財育成や組織開発の研究報告なども参考にして整理を行いました。もちろん、一番学生と近いところに立って仕事をしている採用担当者の意見もとても重要です。

そうして何度も検討を重ね、情報を整理し、「求める人財像」として表現をまとめていきます。最後に皆さんの目に留まるのは、数行の文章ですが、その陰に膨大な作業が実施されているのです。

皆さんも興味のある企業の「求める人財像」を採用ホームページから探してみてください。一般的に、以下のように自社の「求める人財像」を文章で説明しています。

人財像の例

これらは皆さんへの単なるメッセージではありません。採用活動の「評価の観点」や、育成活動の「成長の指標」としても使われます。ではまず「評価の観点」という意味について、次の章で説明しましょう。

「求める人財像」は選考での評価に直結する

「求める人財像」は「人を評価する際の観点」という側面を持っています。ただ、人が人を評価するのは簡単なことでありません。
そこで、面接官が皆ばらばらな人を合格にしてしまわないように、「求める人財像」によって、評価の観点を共有しているのです。
以下の図をご覧ください。

求める人財像と評価の観点

「求める人財像」は、行動特性、知識・スキル、態度、動機・意欲、興味・志向、価値観、性格、基本処理力などのさまざまな観点から検討されます。知識があるだけでは駄目、やる気があるだけでは駄目、ということになります。
その中でも、基本処理力や性格、価値観などは今後変容する可能性が低い要素であること、知識・スキルや行動特性は入社後も育成が可能である要素であることを視野に入れて検討されます。

特にここ数年で重視され、「求める人財像」の表現に強く意識されているのは行動特性、つまり行動の質です。行動特性で皆さんが理解しやすいのは、大学のキャリア教育でも多く使用されている、「社会人基礎力」でしょう。
「社会人基礎力」は、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年から提唱しているものです。以下の図をご覧ください。

行動特性の例

分類 能力要素 内容
前に踏み出す力(アクション)
実社会の仕事において、答えは一つに決まっておらず、試行錯誤しながら、失敗を恐れず、自ら、一歩前に踏み出す行動が求められる。失敗しても、他者と協力しながら、粘り強く取り組むことが求められる。
主体性
物事に進んで取り組む力
例)指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む。
働きかけ力
他人に働きかけ巻き込む力
例)「やろうじゃないか」と呼びかけ、目的に向かって周囲の人々を動かしていく。
実行力
目的を設定し確実に行動する力
例)言われたことをやるだけでなく自ら目標を設定し、失敗を恐れず行動に移し、粘り強く取り組む。
考え抜く力(シンキング)
物事を改善していくためには、常に問題意識を持ち課題を発見することが求められる。その上で、その課題を解決するための方法やプロセスについて十分に納得いくまで考え抜くことが必要である。
課題発見力
現状を分析し目的や課題
を明らかにする力
例)目標に向かって、自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する。
計画力
課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
例)課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし、「その中で最善のものは何か」を検討し、それに向けた準備をする。
創造力
新しい価値を生み出す力
例)既存の発想にとらわれず、課題に対して新しい解決方法を考える。
チームで働く力(チームワーク)
職場や地域社会等では、仕事の専門化や細分化が進展しており、個人として、また組織としての付加価値を創り出すためには、多様な人との協働が求められる。自分の意見を的確に伝え、意見や立場の異なるメンバーも尊重した上で、目標に向けともに協力することが必要である。
発信力
自分の意見をわかりやすく
伝える力
例)自分の意見をわかりやすく整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝える。
傾聴力
相手の意見を丁寧に聴く力
例)相手の話しやすい環境をつくり、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す。
柔軟性
意見の違いや立場の違いを理解する力
例)自分のルールややり方に固執するのではなく、相手の意見や立場を尊重し理解する。
情況把握力
自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
例)チームで仕事をするとき、自分がどのような役割を果たすべきかを理解する。
規律性
社会のルールや人との約束を守る力
例)状況に応じて、社会のルールに則って自らの発言や行動を適切に律する。
ストレスコン
トロール力
ストレスの発生源に対応する力
例)ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜いて対応する。

経済産業省HPより

「求める人財像」の表現は、しばしば社会人基礎力の中に出てくる表現に似ています。それは、今の企業の「求める人財像」が、行動特性を中心に検討されている(=行動の質の高い人を求めている)ことに他なりません。
企業の採用活動で、一般的に意欲が高い、性格が明るいといったことよりも、行動の質に重きが置かれる傾向があるのは、「行動の質や知識・スキルが成果の創出に直結する」といった経営学上の研究が浸透しているからです。
さらに、知識・スキルは入社後に獲得してくれればよいけれども、行動の質については入社時からしっかり求めたい。そこで、「求める人財像」にはその企業における理想的な行動が表現されるということになるのです。
よく面接の際に「学生生活で力を入れた事」を質問されると聞いたことがあるかもしれません。企業は「学生生活においてどういう行動をとってきたか」を確認したいのです。その理由がこれで理解できるでしょう。

「求める人財像」は入社後の成長を方向付ける

「求める人財像」をしっかりと作成している企業は、「求める人財像」を育成活動にも使用しています。採用した人財が全員パーフェクトな人財だということはあり得ないので、「求める人財像」に成長できるように、育成施策を実施しているのです。
例えばある企業では、内定者や新入社員に、「求める人財像」に近づくためのプログラムを提供しています。そのプログラムでは、普段どのような行動をとれば「求める人財像」に近づけるのか考え、自分でテーマを作ります。実際にテーマを持って一定期間を過ごした後、振り返りの機会を持ち、自分なりに改善点を考え、またその後の生活に反映していくといったことを行います。

このように、企業にとって「求める人財像」は就活生への最初のメッセージであり、選考の評価の観点であり、社員育成の指標でもあるのです。その設計がしっかりされている企業では、なぜこの応募者を合格にしたのか、社員になったら今後どのように育成するのか、しっかりと考えていると言えます。

皆さんの就職活動は入社がゴールではありません。入社後に活躍することが社会人生活の本当の充実につながるのです。そのためには、「求める人財像」がしっかりと作成され、選考を通じて自分がそれに合致していると納得感を与えてくれる企業を選択することが近道だと言えるでしょう。

PROFILE

小宮健実
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行なう。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を活かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー/人材採用研究会 理事

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